2026年04月14日

【焦点】米イラン戦闘「異聞」「エプスタイン戦争」のイラン、コメディー映画『ウワサの真相』と重ねる米国=橋詰雅博

 米国とイスラエルによる先制攻撃を受け、抗戦したイラン。戦闘終結に向けた米イランの協議は不調に終わる。先行き情勢は混とんとしたままだが、戦闘を仕掛けられたイラン人は、この有事を「エプスタイン戦争」と呼んでいる。
 エプスタインとはご存じの通りあのジェフリー・エプスタインのことで、少女への性的虐待などの罪で起訴され拘留中に死亡した米富豪だ。英アンドリュー王子は深い仲だったエプスタインへの機密漏洩の疑いで今年2月に逮捕されたのは記憶に新しい。その少女買収に関するエプスタインファイルにはトランプ米大統領の名前が数千回も出ているとテッド・リュー米下院議員(民主党、カリフォルニア州)は指摘している。イランを攻撃したのは、自身のスキャンダル隠しを意図したものというわけだ。

 これに絡み米国では、1997年の米コメディー映画『ウワサの真相』(原題「ワグ・ザ・ドッグ(wag the dog)」)が話題になっている。この映画は大統領選期間中に発覚した大統領のセックス・スキャンダルから国民の目をそらすためアルバニアが「敵国」とされる。悪辣さを強調するため非道なアルバニアというイメージが捏造され喧伝されていくのである。トランプの暴走とこの映画をオーバーラップさせて見ているわけだ。
 加えてエプスタインにはもう一つ顔があったという。彼はイスラエルの対外情報機関モサドに買収されスパイとして訓練を受けた工作員という陰謀めいた説だ。トランプはエプスタインを介してイスラエルに弱みを握られている。だからトランプはイスラエルのネタニヤフ首相が主張するイラン攻撃を受け入れた。弱みが何かは定かでない。
 
 ともあれエプスタイン人脈に連なるトランプが少女売春の関与が明らかになると、「大統領の弾劾」にもなりかねない事態に陥る。
 
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2026年04月13日

【おすすめ本】小松 由佳=『シリアの家族』―過酷な日常を生きる一家 自らの苦闘を共に描く高世 仁(ジャーナリスト)

  開高健ノンフィクション賞を受賞した本書は、一家の運命を通じて、シリア内戦を生きた人々の声を掬い取った、スケールの大きな傑作だ。
 写真家の著者が、初めてシリアを訪れたのは2008年。ラクダの放牧で生きる四代70人の大家族の伝統的な暮らしと文化に魅せられ、彼女は繰り返し現地へ通った。

 だが2011年、民主化運動とアサド政権による弾圧が、一家の運命を一変させる。政府軍に徴兵された十二男ラドワンは、民衆弾圧を拒んで脱走。民主化運動に加わった兄は、秘密警察に逮捕された。
 故郷パルミラも戦場となり、家族はトルコや欧州へと離散する。著者は国外に逃れたラドワンと結婚し、日本で二児を育てながら一家とシリアの激動を記録し続けた。

 物語は著者自身の家族にも及ぶ。男性優位の文化で育った夫は家事や育児を担わず、さらにはシリアから若い第二夫人を迎えたいと言い出す。
 著者は一人の女性として傷つきながらも、これを「第二夫人騒動」と名づけ、「貴重な異文化体験」として記録した。著者の記録者としての執念に感銘を受けると共に、固有の文化の内在的理解と近代的人権を、どう両立させるのかは、我々が異文化に向き合う際の根本的な課題であることにも気づかされる。

 アサド政権崩壊の報を受け、著者は「大手メディアの報道とは異なる切り口」で伝えようと考える。そこで夫を現場に立たせ「当事者」の目から激動の歴史的瞬間を描くことで「差別化」を図った。本書からはフリーランスとして生き抜く知恵をも学ぶことができる。(集英社 2200円)
      
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2026年04月12日

【抗議デモ】国会前「19日行動」1万1千人=編集部

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 高市首相が訪米した19日、国会周辺や国会議員会館前には、国会を取り囲む形で1万1000人(主催者発表)の人々が沿道に結集。「イラン攻撃を許さない」「高市政権から平和憲法を守り生かそう」などと声をあげて大規模な抗議行動を展開した=写真=。

 2015年9月19日の安全保障関連法(安保法制)強行採決以来、この日を忘れまいと毎月19日に取り組まれてきた「19日行動」はこの日、過去最大規模での展開となった。
 参加した様々な団体や市民たちは、米トランプ政権とイスラエルのイランへの先制攻撃から、米のいいなりで沈黙する日本政府のダブルスタンダード姿勢批判。ホルムズ海峡への自衛隊派遣阻止から、高市改憲の動きへの危惧、国民の暮らしを犠牲にして進む大軍拡反対など、様々なテーマを掲げて声をあげた。

 参加者の共通の認識は、軍事費の拡大が生活を圧迫している現状や、ジェンダー平等や選択的夫婦別姓、在留外国人の人権保護など社会の多様な課題と高市政権が押し進める戦争への道が地続きであること。平和の構築は武力でなく、憲法9条に基づいた対話と外交でしか実現できないとの思いだ。

 アピールも昔からおなじみの演説や呼びかけに加え、シールズの運動で定着した音楽にのせてのアピールや、ペンライトによる視覚的な効果を使ったものまでと多様化しており、新たな参加者の広がりも感じられた。
 また、参加者からも「弟は人助けのために自衛隊に入った。誰かを殺すことも殺されるのもいやだ。国の使い捨ての駒ではない」(自衛隊員の家族)、「核兵器に抑止力はない。唯一の被爆国として、核兵器禁止条約への参加を」、「軍拡を抑止力と言っても世界最強の軍隊を持つ米やイスラエルは暴走を止めない。憲法9条こそが暴走を止める力だ」、「高市首相は在任中に改憲を実現すると言うが、大増税や戦争準備は選挙の争点になってなどいなかった。市民が求めているのは暮らしの安定だ」など、多様で説得力にあふれる発言が各所で響いた。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年3月25日号 
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2026年04月11日

【お知らせ】5・3有明憲法大集会へのお誘い どなたでも歓迎!

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 今年も5.3有明憲法集会(東京)がやってきます。
毎年、JCJ会員・講読者有志で参加してきましたが今年も行きます。どなたでも歓迎。昨年は6万人の結集。集会後のデモ行進には参加しないで、新橋辺りに移動しての交流会も例年パターンです。
みなさん薫風陽光の下、平和憲法の危機の下、改憲・戦争の出来る国化に抗議の意志を示しましょう!
■主催:平和といのちと人権を!5.3憲法集会実行委員会

■共催:戦争をさせない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、9条改憲NO!全国市民アクション、戦争をさせない1000人委員会、憲法9条を壊すな!実行委員会、戦争する国づくりストップ!憲法をまもり・いかす共同センター、九条の会

https://kenpou2020.jp/information/2026/ ←5.3憲法集会公式HP

■集合場所は、ゆりかもめ 「有明駅」改札に12時にJCJの旗を立てます。りんかい線「国際展示場駅」でおいでの方もここで合流お願いします。
■日時:5月3日(祝・日)
■集合場所:12:00にゆりかもめ 「有明駅」改札口 JCJ旗(青い桃太郎旗)が目印
■流れ:12時に「有明駅」有明口集合後、会場の有明防災公園に移動。14:30からのデモ行進には参加せず新橋に移動し交流会予定。
■待ち合わせ時間に間に合わず、緑地会場に直接おいでになる方は以下連絡先 kyamax@me.com(やまなか)
■帽子、芝生の上に座る、寝そべる敷物、飲み物(熱中症予防)・食べ物は各自用意願います。

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2026年04月10日

【裁判】取材で2次被害? 記者ら訴えた女性が問うもの 記者の取材「面談」が争点に 相手に向かう姿勢問われる=編集部

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 福岡市の西日本新聞社の社前で今年1月、市民たちの一団がメッセージボードを掲げて声をあげた=写真=。ボードには「DV被害者をなぜ傷つけるのか?」「被害者が訴える2次加害」「西日本新聞記者が書いた本」などの文字…。市民たちの行動は、過去のDV・ストーカー被害を連載記事やその後刊行された「評伝」に書かれた女性を支援するものだった。女性は取材のあり方を問いかけた民事訴訟を起こし、一審敗訴後、控訴審で争っている。編集部はこの問題には訴訟の行方とは別に、メディアの取材のあり方、報道することの意義と、される側へのプライバシー配慮について報道する側、される側の双方にとって真剣に検討すべき重い課題が孕まれていると考えた。

過去の被害が
ある日記事に

 女性は「1999年から2000年にかけ、元交際相手からDVと執拗なストーカー被害を受けた」。加害男性には2001年8月に懲役10カ月の判決が下り、控訴も退けられて判決は確定。民事でも被害女性への100万円の損害賠償命令が出された。
 だが、女性にとっては、終わった事件だった過去の被害は、約20年後の21年2月から3月にかけて西日本新聞の連載記事の中に掲載された。女性は「過去の被害が知らないところで記事になっていたことに、身体が震えるような衝撃を受けた」と述懐した。

「取材したい」
記者から連絡

 女性のもとには2021年3月、記者から「連載をもとに『評伝』を書くので、被害者に取材したい」と連載終了後に連絡があったという。
 女性が記事を読んだのは連絡を受けた後。記事はストーカー行為には全く触れず、「交際していた女性との関係がもつれ」殴打と表現されていた。加害男性の知人の「(男性が)一方的に悪いとは思わなかった」とのコメントが掲載されていた。女性は当時、加害男性が「痴話げんか」と主張していたことを思い出し、「加害者擁護」と疑問を持ったという。
 だが、取材を断れば、加害者に都合の良いことのみが本に書かれるのではとも懸念、取材を受けようかと考えたという。
この時点で記者からは(女性が)登場する箇所は「原稿やゲラを見せる」、「書かれると差しさわりのある事柄は修正する」などの提案があり、「編集者への確認が必要ですが、筆者の私の意向ですので問題なくお見せできると思います」と約束したと女性はいう。
 だが、ここから話はこじれ始める。その後、数日にわたってメールのやりとりをする中で、記者は「自分がいかに加害男性を尊敬しているか」というようなことを書いてきた。女性は取材を受けることに強い不安を感じ、思い切って記者に「私の被害を軽く考えているのではないか」と指摘。記者は一転して「取材申し入れを取り下げる」と言ってきたという。理由は「取材に最も重要な信頼関係を築くことは難しい」。指摘で「自分の人間性を否定された」。女性はとりあえず場をおさめ、記者と直接会って話をすることにした。

不信がつのった
ぶしつけな質問

 女性と記者は2021年4月、西日本新聞社の会議室で会った。記者からは「思いを聞かせてほしい。通常取材でするメモや録音はしない」と前もって伝えられていたが、記者は女性に、加害男性と交際当時のプライバシーについて尋ねてきた。女性は「初対面の相手には絶対しない、親しい同性の友人にも直接尋ねるのをはばかるような性的な事柄」、他に私の被害を疑問視するような「(加害男性は)こう言っているがどう思うか」と質問され、「頭が真っ白になった」。記者は後にこの日のことを「面談」と言っている。

新聞社に対し
「抗議と要請」

 女性は今後、取材には友人を同行した上で応じると表明したものの、不信を一層募らせた。
女性は翌5月、西日本新聞社に「抗議と要請」を送付。新聞に連載された記事の内容と記者の言動に抗議した。記者が「書く」予定の『評伝』については西日本新聞社と記者に「加害者側の一方的な主張のみを書かず、被害者側(女性)に取材の上、事実を正確に書く」、「原稿とゲラのチェックをさせる約束を守る」ことを要請した。
 この時点では、記者の上司は女性の「抗議と要請」に、被害女性に取材せず記事にしたことを「詰めが甘かった」と反省し、ショックを与えたことを謝罪。ゲラチェックなど『評伝』への要望にも「真摯に受け止め最善を尽くす」としていた。

私にとっては
「加害」の再来

 だが、女性と記者が会ったのは4月が最後だった。5月の西日本新聞社への「抗議と要請」送付後、記者は女性に一切取材はしていない。そして1年9カ月後の2023年1月、刊行された『評伝』には、事件の判決文をもとに女性のプライバシーが記載された。
 「記者が尋ねてきた、あの性的な事柄です」、「もし、約束が守られていたら、私はこれは書かないでほしいと言っていた。私にとっては加害の再来に他なりません」
 女性は「2次加害」だととらえ、2024年6月に、記者と西日本新聞社を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こしたが、一審の地裁では2025年12月敗訴した。
 争点となった「面談」でのやりとりが「取材にあたるか否か」について、判決は、「面談」ではメモも録音もせず、取材はしていないとの記者の説明を採用。取材していない=ゲラを見せなくてよい、とする論理を認めた。

 一審で女性に協力し意見書を提出した元記者のJCJ会員は、記者経験に照らせば「録音・メモ取りをせず自由に話してもらう」事前取材は重要で、「面談」は「広い意味での取材」にあたると思うと語る。記者が取材相手と話し質問もした。相手の感触を探る取材ととらえるのが常識的ではと指摘。それ以上に、取材相手に向かう姿勢が問われているのではないかと問題提起している。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年3月25日号 

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2026年04月09日

【お知らせ】「憲法映画祭2026」4月18日(土)10時20分から20時40分 文京シビック小ホール

 主催者からの案内 
 憲法映画祭は今年で10回目になります。
 その憲法、公布から80年目にして、今や最大級の危機にあるのではないでしょうか。
 いま、私たちも、そうした危機の中にあることを強く認識し、改憲の動きを止める活動をして行きたいと思います。
 憲法の本来の役割とは何か、とくに日本国憲法がめざしているものは何なのかを、多くの人と共に考え、
 憲法がめざす社会をつくっていくのに、こうした憲法を考える活動が役に立てるようにしていきたいと思います。
 是非いらっしゃってください。

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「憲法映画祭2026」第87回 憲法を考える映画の会
 日時:2026年4月18日(土)10時20分〜20時40分
 会場:文京シビックホール(小ホール)341席
   文京シビックセンター2階(地下鉄 春日駅 ・後楽園駅直結)
   **昨年までの会場と会場が変わりましたのでご注意下さい
プログラム
4月18日 10:00  開場 10:20 開会
10:30〜13:10 映画「二十四の瞳」
13:10〜13:50 食事休憩
13:50〜15:50 映画「ラストメッセージ 不死身の特攻兵佐々木友次伍長」
16:00〜18:10 映画「ありふれたファシズム 野獣たちのバラード」
     18:10〜18:20 アニメ「戦争のつくりかた What Happens Before War」
18:30〜20:40 映画「百姓の百の声」
■ 参加費:1日券 一般2500円(若者1500円)
      1回券 一般1000円(若者500円) 
     *『二十四の瞳』のみ入場無料(1日券の対象に入りません)
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2026年04月08日

【出版トピック】作家・綾辻行人さんの作品装う“偽本”がAmazonに出現 本人が注意喚起!

 作家の綾辻行人さんは、4月3日、自身の作品を装った偽の電子書籍がAmazonで販売されているとして、広く注意するよう呼びかけた。
 偽の電子書籍のタイトルは『続・十角館の殺人』『十角館の再訪』。綾辻さんは、「私はまったく関知しておらず、驚きました。誰かが生成AIで勝手に作ったもののようです」と説明している。
 綾辻さんが作家デビューを果たした著書『十角館の殺人』(講談社ノベルス)を想起させるもので、書影には、同書の表紙を手掛けた漫画家・喜国雅彦さんのイラストを模した画像を使っている。
 これら偽の電子書籍を手掛けた著者は「阿津川」を名乗り、作家の阿津川辰海さんの作品を装った電子書籍もAmazonで販売している。阿津川さんも、自身のXアカウントで「もちろん私はまるで関わっておりません……悪質なひともいるものですね」と注意を呼び掛けている。
 綾辻さんは自身のXアカウントで「こんな書影までAIで作って。喜国雅彦さんの絵のパクリもいいところ。あきれます」と指摘。『十角館の殺人』の版元である講談社に連絡し、対処中としている。
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2026年04月07日

【おすすめ本】七沢 潔 『原発をとめた人びと──奥能登・珠洲 震源地からの伝言』―立地計画ストップの歩みを追う=鈴木 耕(編集者)

 2024年元日、能登半島を激震が襲った。傷跡は2年後の現在も消えていない。日本政府の災害対応は酷いものだが、その陰で珠洲市の人々の闘いに、感謝しなければならない事実がある。

 この地の「原発計画」を撤回させた住民運動がなければ、今回の地震で、あの福島原発と同等の、いや、もしかしたらそれ以上の災禍が日本を覆っていたに違いない。
 かつて著者は、NHKディレクターとして住民運動に密着した作品〈ドキュメンタリー’90 原発立地はこうして進む―奥能登土地攻防戦〉で、過疎地の原発計画が、いかに地域住民を苦しめ分断していくかを克明に描いた。その狭間で揺れる人々の心情を表す短歌を本書で引用する。
 〈原発ができれば珠洲を捨てますと少女は訴う涙ながらに〉

 原発を巡る幾度もの選挙や攻防を経て、中部電力は結局、計画を断念する。それを「民主主義の学校であった」と著者は記す。住民運動の輝かしい勝利ではあったけれど深い傷跡が地域には残った。それを払拭するための人々の動きまで、丁寧に拾い上げていく。
 誠実な著者のインタビューは、反対運動に携わった僧侶の塚本真如さんや落合督子さんや北野進さんたちだけではなく、原発の強力な誘致派として敵対した上田幸雄さん(元県議)にまで及ぶ。

 上田さんが原発を過疎地域の振興のために必要だとして苦闘する様を、著者は優しく解きほぐしていく。人間ドラマが読む者の胸を打つ。本書は著者の祈りをも込めた奥能登からの伝言である。(地平社1800円)
                     
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2026年04月06日

【焦点】原潜保有、核武装への一歩 高市首相「憲法違反ではない」=橋詰雅博

 自民党が総選挙で大勝し自信をつけた高市早苗首相は、持論の防衛力強化の目玉として原子力潜水艦導入に乗り出そうとしている。
 引き金になったのは防衛省の有識者会議が作成した昨年9月の報告書だ。この中で長射程ミサイルを搭載した長距離・長時間の移動や潜航が可能な「次世代の動力」の潜水艦を保有することが望ましいと提言。報告書作成段階で原子力潜水艦の明記が検討されたが、「次世代の動力」に。9月19日付朝日新聞によると「世論のハレーションが大きいので、原潜への直接の言及は避けた」(防衛省幹部)という。
 自民党と日本維新の会が締結した10月の連立合意書でも「わが国の抑止力の大幅な強化を行うため(中略)次世代の動力を活用したVLS(長射程垂直ミサイル発射装置)搭載潜水艦の保有にかかる政策を推進」と書き込んでいる。
 小泉進次郎防衛相も「原子力だからだということで議論を排してはならない、こういうことが私の思いとしてはあります」と11月7日の記者会見で述べた。

韓国と豪州導入へ
                 
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 政権内で原潜保有が持ち上がったのはことについて原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏=写真=は「日本の潜水艦(22隻保持)は、中国やロシアなどの艦船動向の監視と、もう一つ大きな任務は移動する海上自衛隊艦艇のガード役です。ところがスピードの速い自衛艦に今のディーゼル発電機を使う潜水艦では追いつけないケースが少なくない。それを補うため浮上したのが原潜です」。
 さらに@韓国原潜を米国内の韓国所有の造船所で建造をトランプ米大統領が承認、A米英豪3カ国の軍事協定「AUKUS(オーカス)」に基づき豪州が米国の原潜購入や自国製造を決めた―ことも日本の原潜保有推進に拍車をかけた。
 ところで日本はもちろん韓国も豪州も核拡散防止条約(NPT=約190カ国加盟)に加盟する。両国は「動力に原子炉を使う通常兵器の潜水艦」なのでNPTに抵触しないとしている。

NPT体制形骸化

 そのNPT体制は大きく揺らいでいる。松久保氏はこう指摘する。
 「核兵器保有国と定められた米露英仏中の5カ国は核軍縮を怠りむしろ核兵器の近代化に取り組んでいる。NPTの遵守義務を守っていないので、非核兵器国は不満を抱いている。信頼低下のNPTは空文化になる可能性がある」。
NPT体制の形骸化が韓国と豪州の原潜導入や日本の原潜保有推進の要因かもしれない。
原潜保有には小型原子炉の開発が不可欠で、建造費は1隻1兆から2兆円。任務遂行には数隻が必要。コストは積みあがり、維持費も膨れ上がる。「米国からの原潜リース」(石破茂前首相)でもリース代は巨額になるだろう。
 そもそも唯一の戦争被爆国、日本はこれまで世界に核廃絶を訴えてきた。原潜保有は整合性が取れない。

原子力基本法改正

 原潜保有をめぐり野党は反発し国民的議論が起きるだろうが、高市首相は「原潜保有は憲法違反ではない」(2021年9月27日、FNNプライムオンライン)という姿勢は曲げることはないだろう。与党が衆議院で圧倒的多数を占める状況下では、原子力基本法第2条(原子力の研究・開発・利用を「平和の目的」に限る」)の改正は難しくない。
 原潜保有が現実になったらどうなるか。松久保氏は「核兵器保有へのステップと海外は見るでしょう。世界の核をめぐる緊張は高まり、各国の安全保障に影響を及ぼすのは必至」と警鐘を鳴らす。
 「核武装」につながる原潜保有は断固阻止すべきだ。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年3月25日号 

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2026年04月04日

【映画の鏡】原村監督「山里3部作」が完成『山人(やまんど)−縄文の響きが木霊する―』持続可能な未来を問う山の暮らし=鈴木 賀津彦

 
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 私たちは人里の熊にどう対応すればよいのか、ここ数年問われている問題を掘り下げて考えるためにも、山の自然を壊すことなく、山の恵みに生かされて暮らしている本作の主人公の生き方から学ぶべきことが沢山ある。

 福島県奥会津地方の山奥、三島町の菅家藤一(かんけ・とういち)さん(72)は若い頃から奥山に分け入り、今も山の恵みに包まれて生きている。原村政樹監督は8年前に出会い「菅家さんの山での営みを映像記録すれば、私たち現代人が見失いがちになった大切なメッセージを伝えられるのではないかと確信した。撮影を始めると、常に菅家さんの言葉の深さに感銘することの連続でした」と話す。

 多彩な山菜が芽吹く春。全部は採らないで必ず残しておく。そうすることで毎年、途絶えることなく良い山菜が採れるのだ。獣に対しても「狩猟は文化だ」という菅家さんは、害獣駆除で無分別に熊を殺すことに心を痛め、山奥の熊は獲らない。山鳥も雌は逃がす、そんな暮らしの作法をカメラは捉える。
 22年の『若者は山里をめざす』、24年の『山里は持続可能な世界だった』に続く『山人』の完成で、山里の価値の再発見に眼を向けてきた原村監督の3部作として、自主上映活動などでも広げてほしいと期待する。
 次回作は「原発と人権(仮題)」で、今秋の公開に向け制作中だが、山里3部作を観れば、原村監督がなぜ原発と向き合わなければならないのかも見えてくる。上映時間74分。公開は3月28日から東京・新宿K′sシネマで、4月は18日から埼玉・川越スカラ座。     
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年3月25日号 
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 【4月出版界の動き】出版業界に押し寄せる第3の大波

◆書協が生成AI使用の指針を
 出版社の業界団体、日本書籍出版協会は出版社が生成AI(人工知能)を使う際の指針作成に乗り出す。出版社が行う翻訳・校正など編集業務にAIを導入する際のガイドラインを作成する。また本の著者が執筆時にAIを使う場合を想定し、契約書に規定を盛り込むといった対応を進める。
 生成AIへの対応を議論する検討会を設置して、381の加盟企業のうち約40社が検討会に参加。専門家からのヒアリングを交えて話し合う。秋にも出版社向けのガイドラインをまとめることを目指す。

◆2月出版販売金額2.3%増
 2026年2月期の紙書籍雑誌推定販売金額は取次ルートのみで、911億3700万円で前年同月比2.3%増、書籍は611億1800万円で同3.9%増、雑誌は300億1800万円で同0.6%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同2.0%増、週刊誌が同15.1%減。返品率は、書籍が同1.6ポイント減の28.5%、雑誌は同1.8ポイント減の42.2%。
 既存店店頭での売れ行きは、書籍がほぼ前年並みで、文芸約2%増、文庫本約4%増、学参約1%増、ビジネス書約3%減、児童書約1%減、新書本約4%増。雑誌は定期誌がほぼ前年並み、雑誌扱いコミックスが約8%減、ムックが約1%減、書籍扱いコミックスが約2%増。

◆小学館が性加害事件に対応
 小学館の漫画アプリ「マンガワン」が男性漫画家の性加害を知りながら、新連載の原作者に起用していた問題について、小学館は謝罪し、第三者委員会の設置を発表。だが漫画家たちからは対応を批判する声が相次いでいる。これを受けて再度3月9日に「お知らせ」と題する声明を発表し、謝罪と今後の取り組みについて報告。
 編集者の見識や漫画家への対応、出版・編集のモラル・責任などが問われている以上、今後の動きが調査報告と合わせ注目される。

◆出版インフラ担う講談社の動き
 講談社の関連会社であった豊国印刷、講談社ビジネスパートナーズ、第一紙業を統合して発足した株式会社KPSは、長年、講談社の印刷や物流、資材調達などの業務を行ってきた。これを再編し、KPSホールディングス傘下に「プロダクツ」「フルフィルメント」「ソリューションズ」「システムズ」の4事業会社を設立した。出版事業を始め物流、システム、各種業務などを、自社グループにとどまらず、他の出版社へも提供するサービスを進めている。培ったノウハウを生かし、多くの出版社に共通する業務を担うことを目指す。
 この発想は、同社の米国出版社が現地で業務委託しているペンギン・ランダムハウス・パブリーシングサービシーズから来ているという。KPSも将来的にはセールスなども含めて全般的な出版業務を請け負うことを目指す。物流部門では、取次出荷にとどまらず、直送など多様な流通に対応する。

◆オアシスがKADOKAWAの筆頭株主
 KADOKAWAは、物言う株主として知られる香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントが、筆頭株主になった。オアシスの保有議決権数は総株主の議決権に対する割合が11.89%に達した。それまで筆頭株主の地位にあったソニーグループ株式会社が同位置から外れ、保有割合は10.10%から10.04%に減少した。オアシスは最近になって、さらに買い増しを進め、議決権に対する割合が13.76%となった。
 オアシスは日本でも積極的な働きかけを行っており、今回の大量取得も今後KADOKAWA経営陣に対して何らかの提案を行う可能性がある。

◆島根県大田市に2年ぶり書店誕生
 書店ゼロとなっていた大田市に今井書店が出店することが決まり、6月24日にオープンする。大田市には1987年から地元の人に愛されてきた市内唯一の書店があった。しかしネット通販の拡大や電子書籍の普及なで売り上げが減少、おととし3月に閉店。それ以降、大田市は書店ゼロとなっていた。
 大田市は出店にかかる費用を支援するため、10年間で最大5500万円を助成する独自の制度を創設し、事業者を公募したところ今井書店が名乗りを上げ、イオンタウン大田への出店が決まった。

◆「本なら売るほど」がマンガ大賞に
 書店員や漫画ファンの投票で決まる「マンガ大賞2026」に、児島青さんの「本なら売るほど」(KADOKAWA)が選ばれた。
 脱サラして古本店「十月堂」を開業した青年が、さまざまな人々と出会いながら、本の持つ魅力や価値に改めて気付いていく連作短編集。繊細な絵柄でリアリティーを感じさせる仕立てで、雑誌「ハルタ」で連載している。児島さんは性別や出身地など、詳しいプロフィールは非公表。
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2026年04月03日

【リレー時評】「サル化」する為政者たち=藤森 研(JCJ代表委員)

 年明けから、米国によるベネズエラ侵攻と大統領拉致、米国とイスラエルによるイラン攻撃と最高指導者ハメネイ氏殺害が、相次いだ。米国はわずか2か月の間に、気に入らない2つの主権国家を暴力で踏みにじったことになる。

 「人間の道徳と国際法のあらゆる規範を冷笑的に踏みにじる形でハメネイ氏が殺害された」という指摘には深く頷(うなず)かされる。しかし発言者を知り、のけぞった。ロシアのプーチン大統領の言葉だ。厳冬に発電所を狙う残酷なロシアのウクライナ侵略は、すでに4年を超えている。
 山極寿一氏は『「サル化」する人間社会』で、サル(ニホンザルなど)の社会は純然たる序列社会で、他を負かして自分は勝とうとする「勝ち好み」の社会だとする。一方、ゴリラは仲間の中に序列を作らず、喧嘩しても勝ち負けをつけずに和解する平等で平和的な社会。人の現代社会はどちらも備えているが、「私が見る限り、人間社会は加速的にサル社会化している」と書いた。

 フランスのマクロン大統領までが「今後半世紀は核兵器の時代だ」と核増強政策に転じる。
 地球上を「力による支配」が跋扈(ばっこ)している。
「優位なサルは肩の毛を逆立て、のしのしと威張って歩く」という山極氏の観察に、なるほど、と大国の為政者の歩く姿がダブる。劣位のサルは、ただへつらうのだという。

 力を象徴する原子力空母に乗艦しトランプ氏の脇でぴょんぴょん飛び跳ねた高市首相は、米国などのイラン攻撃には「法的評価を差し控える」と口ごもる。日米首脳会談でも、イランだけを非難して「ドナルド」の意を迎えた。ドラムが趣味だそうだが、口の悪い人は、「ドラムよりトランペット(トランプ・ペット)がお得意では」。

 なぜこのような世界が現出してしまったのだろうか。
 各国の国内面から考えよう。元『世界』編集長の岡本厚氏は、高市イメージをめぐって人気投票のように行われた2月総選挙の底流のポピュリズムに、興味深い分析を加えた。「世界的なポピュリズム政治を生み出したのは、30年以上にわたってつくられた分断と格差である」とし、民主主義の基盤である安定した中間層を増やす必要性を指摘した(「マスコミ・文化 九条の会 所沢」会報209号別刷)。

 国際面で注目されるのは、スペインのサンチェス政権の毅然とした姿勢だ。米国などのイラン攻撃に反対し、同国内の米軍基地について「国連憲章と矛盾する目的での使用を認めない」と表明した。
 任期や寿命でポスト・トランプ、ポスト・プーチンの時代は必ず来るが、世界を帝国主義に逆回転させようとする「力の支配」「恐怖の支配」を、できるだけ早く「法の支配」「理性の支配」に戻すには、やはり正気の「人間」たちが声を挙げ、闘うほかない。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年3月25日号 

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2026年04月02日

【月刊マスコミ評・新聞】「原発」をどうするのか、及び腰の新聞=白垣 詔男

 「3・11東日本大震災」発生から15年たった。
 3月11日、12日の各紙朝刊社説は、この問題を2日とも1本もので取り上げた。読売だけは11日朝刊に2本立ての1本で書いただけだ。
これら2日間の各紙の主張に「現政府が推進する原発回帰」について、どう考えるのか、ほとんど触れておらず、「及び腰」とも思われても仕方がないだろう。

 そんな中で朝日は12日付で「東電の事故から15年 脱原発の土壌 再エネをさらに」との見出しで、「再生エネルギー活用で脱原発」を訴えていたのが目についた。しかし、これは、同紙が2011年7月に掲載した社説特集「原発ゼロ社会」で訴えた主張をなぞる形で持ち出したものだという。
 それでも、現在、政府が推進する「原発回帰」の方針に対する批判としての力を持っている。この中で「安全保障の砦(とりで)である原子力規制委員会の変質ぶりも気になる。60年超運転では政府の方針に沿って性急に制度を変えた」と、政府一体となった「原発推進」にあることを強調している。

 しかし、他紙は西日本が12日「遠い復興から学ぶものは」との見出しで、結論として「多くの人々から古里を奪った原発事故から、私たちはいくつもの教訓を得た。原発の安全性は確かか。国の政策に問題はないか。絶えず関心を持ち続けよう」と読者に下駄を預けているのはいただけない。
 原発事故がなければ、帰還困難にもならなかっただろうし、古里を失うこともなかった。それは、能登半島地震被害を東日本大震災と比べ、能登半島の現状をみても明らかだ。能登半島は建物の再建や町の復興が問題で「帰還困難」にはなっていない。

 一方、福島原発は廃炉までの道筋さえ、政府、東電とも二転三転させている。原発事故が起きたら、これほど人間の手に負えない原発に、なぜこうもこだわるのか。「原発ゼロ」にしたら核兵器に転用できるプルトニウムがなくなることを政府が懸念しているのではないか。この問題は、報道しないので詳細を国民は知らない。
 「原発回帰」は「戦争への道」につながっていることを国民は意識すべきだし、新聞は、この問題について、もっと情報を知らせてほしい。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年3月25日号 
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2026年04月01日

【トークイベント】「I am フォトジャーナリスト」 若手3人、戦時下のウクライナ取材=古川 英一

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      左から森佑一さん 武馬怜子さん 小野寺翔太朗さん=3月1日、東京・新宿  
 「I am フォトジャーナリスト」と銘打ったトークイベントが3月1日東京・新宿で開かれた。フリーで国内外に足を運び取材・撮影を続けている若い3人が、自分たちの活動や思いを伝えようという企画だ。3人は、時期は違うものの戦時下のウクライナを訪れ、その現状を発信。現地のウクライナの人たちをテーマに今年1月に本を出した小野寺翔太朗さん。そして東日本大震災の被災地からミャンマーまで、歴史と人の記憶を撮り続ける武馬怜子さん。それに中東ヨルダンでの海外協力隊での活動を経て、イエメンなど中東の国々を取材する森佑一さんが顔をそろえた。

 小野寺さんはジャーナリスト、武馬さんは報道写真家、森さんはドキュメンタリー写真家と、名乗り方も違う。自分をどのように規定して世の中に知ってもらうのか、そこからしてフリーとして活動していくことは大変なのだと3人は、ユーモアを交えながら語った。
 武馬さんはインドでのミャンマー避難民の取材から戻ったばかりで「戦争の実態は取材者がそこに行かなければわからない。また日本軍のインパール作戦の軌跡をライフワークとして追い続けていきたい」と話す。小野寺さんは「戦争で故郷を失った人たちの姿を伝えていかなければならない。声なき声を伝えていきたい」と訴えた。森さんは「戦争は最大の環境破壊。現地の伝統や文化・暮らしが戦争によって壊されていくという視点を持って伝えていきたい」と語った。

 最後に3人は「フリーランスという難しい立場について話を聞いてもらう場になった」「発信する場が少ない中でいい機会になった」と口々に語った 
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年3月25日号 
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2026年03月31日

【おすすめ本】書評清原悠 (編著), 模索舎アーカイブズ委員会 (監修)『自由への終わりなき模索──新宿、ミニコミ・自主出版物取扱書店「模索舎」の半世紀』―不思議な書店の歴史をひも解く=鈴木 耕(編集者)

 本書は900頁、厚さは4センチを超える。一晩で読もうなんて不可能だが、少しずつ読んでいくとあの時代≠知る者なら確実に胸が熱くなる。動乱の1970年に産声を上げ、今も東京新宿にある「模索舎」という不思議な書店の歴史の完全版だ。

 そこには他の本屋ではまったくお目にかからなミニコミや小冊子、新左翼と呼ばれた各党派の機関紙、ホッチキスで綴じた雑本までが並んでいた。つまり不穏な気配漂う社会運動のゴッタ煮とでもいうべき書店だったのだ。
 私が本書を取り上げるのには理由がある。模索舎創設の主役は五味正彦だったが、五味と親交の深かった川口秀彦が私の親友だった繋がりで、私も五味とは大学時代からの知り合いだった。

 川口が本書に寄稿した一文「模索舎外伝・五味正彦の思い出」には、私もほんの少しだけ関わった、大学時代の全共闘運年月を経て紆余曲折、私は五味とそれなりのつながりを持ち続けた。新宿の「かくれが」という当時を彷彿させる地下のバーで、五味や戸井十月らと酒を酌み交わしたこともあった。五味も戸井も早逝した。

 個人的な話は措くとして、本書の凄まじさは模索舎に関係した人々へのインタビュー、五味が所蔵のコレクションを読み解き、さらには現在に至る流れを克明に追い、模索舎の全体像を立体的に構成している点だ。70年代からの社会の激流を、これほどまでに眼前とさせる本は空前絶後である。(河出新書 7000円)
              
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