2026年03月30日
【フォトアングル】「原発ゼロ」を訴え8500人が都内でパレード=3月7日、東京都渋谷区で伊東良平撮影
今年は東電福島第一原発事故から15年の節目の年。東京・代々木公園では「とめよう原発!3.7全国集会」が3月7日、開催された。主催の「3・7脱原発全国集会実行委員会」は、毎年集会を開いてきた「さようなら原発1000万人アクション」などの9団体が15年を迎えてまとまり、実行委を構成した。ルポライターの鎌田慧さんの主催者代表挨拶の後、各団体の代表が次々と発言し「原発ゼロ」を訴えた。8500人の参加者は集会後、渋谷と原宿の2コースに分かれてパレードした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年3月25日号
2026年03月29日
【おすすめ本】豊田 直巳 『消える風景 明日へのねがい──原発災害は今もそれでも「ふるさと」』―福島ー放射性物質は消えない 250年以上も残る現実=酒井 憲太郎(フォトジャーナリスト)
本書は、著者の写真絵本シリーズ〈それでも「ふるさと」〉全10巻の10作目。最初の全3巻は2019年に産経児童出版文化賞(大賞)を受賞。カバー写真は「笑」の文字を花で表した木村紀夫さんの庭。彼は父、妻、娘を震災で失い、3人の名前の慰霊碑を建てた。
3月11日、まどか保育園では子供たちを保育の先生らが急ぎ避難させ、カバンも靴もそのまま残っていた。まるで神隠しにあったようだ。その風景は2021年10月に写されて今も残っている。
津波の被害とは違う恐ろしさを感じさせる。除染と家屋の解体が進み、残されていたものが全て消え、その場所は更地になった。その先は「復興シンボル軸」と呼ばれる道路が建設中だ。
双葉町の「原子力正しい理解で豊かなくらし」の看板は、2019年には残っていたが今は撤去されている。壊れた柱や壁は「特定廃棄物」、敷地の庭や土地は「除去土壌等」と呼ばれる。
黒い大きなフレコンバッグに詰められ、仮置場に運ばれる。さらに大熊町と双葉町にまたがるエリア「中間貯蔵施設」へ集められる。中間貯蔵施設に田畑と家の土地を提供して、30年中間貯蔵施設地権者会を立ち上げた門馬幸治さん。中間貯蔵施設エリア内で土地を提供しなかった木村紀夫さんは「大熊未来塾」を立ち上げ、「未来を考える」ための伝承活動を続けている。津波で亡くなった小学1年生の娘、夕凪が眠っている土地でだ。
「複興でふるさとの風景は消えてしまったが、放射性物質は消えない。あと250年以上残る」と著者はあとがきに記す。(農山漁村文化協会2500円 )
3月11日、まどか保育園では子供たちを保育の先生らが急ぎ避難させ、カバンも靴もそのまま残っていた。まるで神隠しにあったようだ。その風景は2021年10月に写されて今も残っている。
津波の被害とは違う恐ろしさを感じさせる。除染と家屋の解体が進み、残されていたものが全て消え、その場所は更地になった。その先は「復興シンボル軸」と呼ばれる道路が建設中だ。
双葉町の「原子力正しい理解で豊かなくらし」の看板は、2019年には残っていたが今は撤去されている。壊れた柱や壁は「特定廃棄物」、敷地の庭や土地は「除去土壌等」と呼ばれる。
黒い大きなフレコンバッグに詰められ、仮置場に運ばれる。さらに大熊町と双葉町にまたがるエリア「中間貯蔵施設」へ集められる。中間貯蔵施設に田畑と家の土地を提供して、30年中間貯蔵施設地権者会を立ち上げた門馬幸治さん。中間貯蔵施設エリア内で土地を提供しなかった木村紀夫さんは「大熊未来塾」を立ち上げ、「未来を考える」ための伝承活動を続けている。津波で亡くなった小学1年生の娘、夕凪が眠っている土地でだ。
「複興でふるさとの風景は消えてしまったが、放射性物質は消えない。あと250年以上残る」と著者はあとがきに記す。(農山漁村文化協会2500円 )
2026年03月28日
【日米軍事】米海軍の空母配備から53年 「これ以上の一体化は皆さんの命にかかわる」 横須賀月例デモ600回 自衛官に直接呼びかけも=木元茂夫(「すべての基地に「NO!」を・ファイト神奈川」)
横須賀に米海軍の空母が配備されたのはベトナム戦争末期の1973年のことだ。「両3年の間」のはずだった配備は、いつの間にか53年と半世紀を超えた。非核市民宣言運動ヨコスカの新倉裕史さん=写真=は「空母ミッドウェイが入港してしばらくしたら街は静かになってしまった。これは何かやらなければと思いました」と、月例デモを始めた動機を語った。
居並ぶ米海軍のミサイル駆逐艦
ベトナム戦争
終結翌年から
ベトナム戦争終結の翌年、76年から開始された月例デモは、2026年1月25日で600回を迎えた。「参加者の最低記録は79年の5人」と新倉さんはふり返った。ピースデポの梅林宏道さんは、「83年に核・非核両方の弾頭をもつトマホーク搭載艦艇を横須賀に配備しようとする動きがあり、全国運動がありました」と回想した。当時は臨海公園と呼ばれていたヴェルニ―公園に多くの人々が集まり、長さ15mくらいだったかの長い長い横断幕を掲げて、米海軍の正面ゲート前をデモ行進したことを思い出す。
88年7月には海自の潜水艦「なだしお」と大型遊漁船「第一富士山丸」が衝突し、乗客と乗組員30名が亡くなる大事故もあった。91年の湾岸戦争、03年のイラク戦争では、横須賀の空母が艦載機による空爆を繰り返した。随伴艦として出動したイージス艦はトマホーク巡航ミサイルで対地攻撃を行った。このころ、03年〜04年の月例デモ参加者は平均50名を超えた。「復興で死者は還らない」という横断幕をかかげ、イラク攻撃からもどってきた空母キティ―ホークにデモをやった記憶は、いまも鮮明に残る。
米海軍の原子力空母ジョージ・ワシントン
空母原子力化へ
基地大改造工事
米海軍は原子力空母配備のため、横須賀基地の大改造にのりだした。まず始まったのは、350mくらいだった岸壁を400mに延長する大工事。戦時中に戦艦信濃の空母改造工事に使われた巨大なクレーンはこの過程で撤去され、新たに設置された2基の巨大なクレーンは「横綱」、「大関」と命名された。
土砂の崩落事故が起き、明らかになったのは深刻な土壌と地下水の汚染だ。浄化には2年くらいかかったという。
純水プラント
ガス発電所も
念入りに行われた浚渫工事は水深13m確保のためで、船底から海水を取り入れる原子力空母の3次冷却水に土砂を吸い込まないのが目的。基地内ではさらに、原子炉の一次冷却水に使用する純水製造プラントが新設され、原子炉冷却に必要な電力が東京電力だけでは不安と、東京ガスからガスを買い基地内にガス発電所も新設した。米海軍は、こうした一連の工事を終えたが、原子力空母の艦内火災が起き、配備は半年余り遅れた。
機動隊員からの
意外な声かけも
08年秋、原子力空母ジョージ・ワシントンが配備された。警備の機動隊員から「みなさん、この日のためにがんばって来られたのでしょう」と意外な声をかけられて驚いた思い出もある。
ジョージ・ワシントンは15年に原子炉の燃料棒交換で、同ドナルド・レーガンと交代。改修工事を終えて24年に再びもどってきた。
月例デモ参加の市民たち
日中間の緊張
どうほぐすか
月例デモの参加者はこの間、30人から40人くらいの間を推移。私は、海上自衛隊横須賀地方総監部の前で、自衛官に呼びかける役回りを引き受けているが、観艦式と重なり、体験航海で自衛隊の艦艇に乗った人々が総監部前からぞろぞろと出て来るのに2回くらいぶつかった。
普段とは違う緊張を感じるそういう時、「私たちは自衛官の命をとても大切だと思っています」とアピールし、「命を落としたり、負傷することがないよう、そして、他国の人々を殺傷することがないよう願っています」と続ける。見学者はもちろん、自衛官からも罵声を浴びせられたことはない。総監部の重そうな扉の内側に警備の自衛官が立っていることもある。直接、自衛官に呼びかけることのできる貴重な機会である。自衛官から手紙が来たこともある。
月例デモ600回の歩みを報告する写真展
日米ガイドラインの制定・改定、国会での激論を経た15年の安保法制成立。22年には国会での議論もなく安保三文書が閣議決定され、米軍と自衛隊の一体化は76年とは比較にならないほど進んだ。
高市首相の「台湾有事」存立危機事態発言、自衛隊機と空母遼寧艦載機との接近・レーダー波照射事件。高まる日中間の緊張をどうほぐすかが問われている。「これ以上の日米軍事一体化は自衛官のみなさんの命と健康にかかわる」、600回のデモの日、横須賀地方総監部前で、私はそう訴えた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
2026年03月27日
【馬毛島基地建設】着工3年 費用青天井 完成遠く 米軍訓練滑走路・施設を先行 視察団、防衛省が阻む=丹原 美穂(沖西ネット事務局・JCJ東海)
視察団は上陸地点の港で抗議の声を
馬毛島(鹿児島県西之表市)で進む米空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)移転に伴う自衛隊基地建設工事は、1月12日が着工から3年。工事差し止めを求め、国と係争中の地元漁師原田純男さんと弁護士、支援者ら12人の視察団が10日、島唯一の上陸場所、葉山港近くにある漁業者の入会地と国有地境界確定のための測量をしに島に上陸したが、防衛省は国有地を通らなければ入会地に立ち入れないにもかかわらず視察団の国有地内通行を拒否。原告の入会地立ち入りを阻んだ。
立ちはだかる防衛省職員ら
現地防衛省職員の拒否理由は「安全確保」。「職員を配置できる日程でない」と拒絶した。交渉した塚本和也弁護士と原告の原田さんは「境界確認は入会地の次世代引継ぎに必須」「通行権は防衛省も認めた権利だ」と、法的根拠なく拒否した防衛省に抗議。監視の目がないとやりたい放題の姿勢を強く批判した。
通行を求める塚本弁護士と地権者
膨らむ総工費
工事は米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)小笠原諸島・硫黄島からの移転を最優先に、米軍訓練用の「くの字型」の2本の滑走路と飛行場関連施設の建設を急ぐ。だが、人材・物資不足で27年完成予定は3年遅れの30年3月にずれ込み、建設費も契約ベースで1兆4522億円に膨らんで総工費は未定と、いまや天井知らずと化した。
夜も続く工事の灯りは四日市コンビナートや夜の銀座と見まがうほどで、12`対岸の種子島からもすぐ近くに見える。変わりゆく馬毛島を住民は日々眺めている。
建設バブル後は
西之表市の資料によると、工事関係者は馬毛島に4200人、種子島から通う関係者は約2000人。人口増で商店街は賑わい、宿舎バブルも現実化した。市にお金が下りてきて町に活気をもたらした公共事業歓迎の声もある。だが、基地建設のバブル崩壊後のたのみは自衛隊基地だけ。先行きに不安をはらむ。
この先に何が待つのか、そうした懸念が現実のものとなるのは馬毛島自衛隊基地が完成したあとの話で、今は見通せない。種子島、馬毛島から見える光景はどんなものになるのだろうか。
緑消えた馬毛島
写真は、鹿児島市の地元紙・南日本新聞社が年明けに空から撮影した最新の馬毛島だ。かつて漁師たちが「宝の島」と呼んだ島から緑が消え、環境省がレッドリストに絶滅のおそれのあるニホンジカの亜種と記載する「マゲシカ」の餌場の草地や生息場所の森はほとんど消えた。防衛省は環境影響評価で保全策を示し24年春、個体数減少を否定したが、専門家は「保全策」の実効性に疑問を呈する。
同年11月初上陸を果たした視察団が、前回上陸時の昨年10月、海岸近くの入会地付近で見た鹿の糞も今回は見当たらなかった。また、ドローン撮影映像でも探したがマゲシカの姿は確認できず、専門家の指摘が現実化し、生存が危ぶまれる事態を懸念している。
訴訟の行方は
基地工事開始後、水産物の水揚げ量は2年で半減したと言われる。計画浮上当初、国は「地元の意向を無視して進めるつもりはない」と言いながら、実際には強引な手続きで工事に着手した。馬毛島を巡っては防衛省への私有地売却を巡り、西之表市長と国を相手取った住民訴訟と、地元漁師が原告の工事差し止め訴訟の控訴審の2件が進行中。工事差し止め訴訟は5月13日判決を迎える。
丹原美穂(沖西ネット事務局・JCJ東海)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
馬毛島(鹿児島県西之表市)で進む米空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)移転に伴う自衛隊基地建設工事は、1月12日が着工から3年。工事差し止めを求め、国と係争中の地元漁師原田純男さんと弁護士、支援者ら12人の視察団が10日、島唯一の上陸場所、葉山港近くにある漁業者の入会地と国有地境界確定のための測量をしに島に上陸したが、防衛省は国有地を通らなければ入会地に立ち入れないにもかかわらず視察団の国有地内通行を拒否。原告の入会地立ち入りを阻んだ。
立ちはだかる防衛省職員ら
現地防衛省職員の拒否理由は「安全確保」。「職員を配置できる日程でない」と拒絶した。交渉した塚本和也弁護士と原告の原田さんは「境界確認は入会地の次世代引継ぎに必須」「通行権は防衛省も認めた権利だ」と、法的根拠なく拒否した防衛省に抗議。監視の目がないとやりたい放題の姿勢を強く批判した。
通行を求める塚本弁護士と地権者
膨らむ総工費
工事は米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)小笠原諸島・硫黄島からの移転を最優先に、米軍訓練用の「くの字型」の2本の滑走路と飛行場関連施設の建設を急ぐ。だが、人材・物資不足で27年完成予定は3年遅れの30年3月にずれ込み、建設費も契約ベースで1兆4522億円に膨らんで総工費は未定と、いまや天井知らずと化した。
夜も続く工事の灯りは四日市コンビナートや夜の銀座と見まがうほどで、12`対岸の種子島からもすぐ近くに見える。変わりゆく馬毛島を住民は日々眺めている。
建設バブル後は
西之表市の資料によると、工事関係者は馬毛島に4200人、種子島から通う関係者は約2000人。人口増で商店街は賑わい、宿舎バブルも現実化した。市にお金が下りてきて町に活気をもたらした公共事業歓迎の声もある。だが、基地建設のバブル崩壊後のたのみは自衛隊基地だけ。先行きに不安をはらむ。
この先に何が待つのか、そうした懸念が現実のものとなるのは馬毛島自衛隊基地が完成したあとの話で、今は見通せない。種子島、馬毛島から見える光景はどんなものになるのだろうか。
緑消えた馬毛島
写真は、鹿児島市の地元紙・南日本新聞社が年明けに空から撮影した最新の馬毛島だ。かつて漁師たちが「宝の島」と呼んだ島から緑が消え、環境省がレッドリストに絶滅のおそれのあるニホンジカの亜種と記載する「マゲシカ」の餌場の草地や生息場所の森はほとんど消えた。防衛省は環境影響評価で保全策を示し24年春、個体数減少を否定したが、専門家は「保全策」の実効性に疑問を呈する。
同年11月初上陸を果たした視察団が、前回上陸時の昨年10月、海岸近くの入会地付近で見た鹿の糞も今回は見当たらなかった。また、ドローン撮影映像でも探したがマゲシカの姿は確認できず、専門家の指摘が現実化し、生存が危ぶまれる事態を懸念している。
訴訟の行方は
基地工事開始後、水産物の水揚げ量は2年で半減したと言われる。計画浮上当初、国は「地元の意向を無視して進めるつもりはない」と言いながら、実際には強引な手続きで工事に着手した。馬毛島を巡っては防衛省への私有地売却を巡り、西之表市長と国を相手取った住民訴訟と、地元漁師が原告の工事差し止め訴訟の控訴審の2件が進行中。工事差し止め訴訟は5月13日判決を迎える。
丹原美穂(沖西ネット事務局・JCJ東海)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
2026年03月26日
【おすすめ本】鶴見太郎『シオニズム イスラエルと現代世界』━ナショナリズムと植民地主義が複雑に絡み合った動きを辿る=大治朋子(毎日新聞専門編集委員)
イスラエル・パレスチナ紛争の発端であり、その主因のひとつともいわれるシオニズムを、「等身大で精緻に」描写したという本書は、国際社会が直面する課題を浮かび上がらせる一冊だ。
ちまたにはびこる「粗雑な」歴史認識を排し、 語られるべき問題や責任を次々と照らし出す。
13万部の大ベストセラーとなった『ユダヤ人の歴史』(中公新書)の著者である、東京大学大学院准教授・鶴見太郎氏による最新刊である。
著者によると、シオニズムは19世紀終盤のロシア帝国領で生まれた「ユダヤ人の民族的拠点をパレスチナに築くことを目指す思想・運動」。その起源はロシア帝国下のポグロム(ユダヤ人襲撃・迫害)に遡る。「ナショナリズムと植民地主義が複雑に絡み合った動き」だという。
本書はキリスト教シオニズムの実像にも迫る。それは米国の4人に1人ともいわれる福音派プロテスタントが共有する宗教的世界観であり、米国とイスラエルを結ぶ太い絆となってきた。
その存在は米中間選挙やイスラエル総選挙が予定される今年、改めて注目を集めそうだ。
鶴見氏によれば、福音派にとってイスラエルは聖地を守ってくれる「用心棒」だ。だからこそ彼らは、「イスラエル応援 団」の最前線に立つ。だが「パレスチナ人のことはほとんど視野に入っていない」。
その偏狭な世界観が、ガザ地区やヨルダン川西岸での悲劇をより深化させてきたという。
本書はシオニズムの軌跡を振り返るとともに、イスラエルの「いま」を読み解く必携の書でもある。(岩波新書1120円)
ちまたにはびこる「粗雑な」歴史認識を排し、 語られるべき問題や責任を次々と照らし出す。
13万部の大ベストセラーとなった『ユダヤ人の歴史』(中公新書)の著者である、東京大学大学院准教授・鶴見太郎氏による最新刊である。
著者によると、シオニズムは19世紀終盤のロシア帝国領で生まれた「ユダヤ人の民族的拠点をパレスチナに築くことを目指す思想・運動」。その起源はロシア帝国下のポグロム(ユダヤ人襲撃・迫害)に遡る。「ナショナリズムと植民地主義が複雑に絡み合った動き」だという。
本書はキリスト教シオニズムの実像にも迫る。それは米国の4人に1人ともいわれる福音派プロテスタントが共有する宗教的世界観であり、米国とイスラエルを結ぶ太い絆となってきた。
その存在は米中間選挙やイスラエル総選挙が予定される今年、改めて注目を集めそうだ。
鶴見氏によれば、福音派にとってイスラエルは聖地を守ってくれる「用心棒」だ。だからこそ彼らは、「イスラエル応援 団」の最前線に立つ。だが「パレスチナ人のことはほとんど視野に入っていない」。
その偏狭な世界観が、ガザ地区やヨルダン川西岸での悲劇をより深化させてきたという。
本書はシオニズムの軌跡を振り返るとともに、イスラエルの「いま」を読み解く必携の書でもある。(岩波新書1120円)
2026年03月25日
【沖縄リポート】女性パワー発揮も…課題重く=浦島 悦子
1月25日に投開票された名護市長選。現職・渡具知武豊氏(2万9票)に1万票近い差(前回の約2倍)をつけられて、私たちが推した翁長久美子候補=写真=(1万543票)は大敗した。投票率は60・75%と前回より大幅に下がった。
名護市民を30年近くにわたって翻弄してきた辺野古新基地建設について渡具知氏は賛否を明言せず、「市長が何を言っても工事は止められない」と居直る一方、基地建設への協力金である米軍再編交付金を使った3つの無償化(保育料・学校給食費・子ども医療費)の成果を強調し、翁長氏が市長になったらすべてなくなると宣伝した。政権離脱した公明党は、名護ではいち早く現職支持を打ち出した。
翁長候補は、市民の暮らしと安全を守り、玉城デニー知事と力を合わせて軍用機の飛ばない空、自然豊かな海を取り戻すため新基地建設に反対すると主張。従来の3つの無償化の継続に加え、乳幼児へのおむつ支給、18歳までのバス賃無料という5つの無償化、基地依存・本土ゼネコン優遇の再開発でなく地域力を活かした地元活性化を訴えたが届かなかった。
今回、名護市初の女性市長誕生を目指す女性パワーが大きく発揮され、街頭の反応も良かっただけに結果の衝撃は大きかった。出口調査によると、「辺野古新基地を容認しない」人が過半数を占めているにもかかわらず、票には反映されなかった。市民の中の疲れ・あきらめ、長年工事が続くことへの慣れや無関心、長くなるほど経済的にも生活の中に浸透していく現状を突き付けられた。
続く衆議院選の結果はさらに大きな衝撃だった。全国的に自民党大勝の予測はあったにせよ、沖縄4選挙区すべてで自民党が勝利するとは! 新党・中道への不信、2区では「オール沖縄」勢力の分裂が自民党を利し、これまで「オール沖縄」が連勝してきた1区もまさかの落選。新基地反対運動を支えてきた議席はすべて失われた。
この結果が今後の反対運動にどう影響して来るのか、秋の県知事選はどうなるのか、課題は重い。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
2026年03月24日
【お知らせ】2026年・第69回 日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)応募・推薦の開始
報道・ジャーナリズム関係のみなさまへ
平素より、⽇本ジャーナリスト会議(JCJ)の活動にご理解とご協⼒を賜り、⼼より御礼申し上げます。
このたび、⽇本ジャーナリスト会議(JCJ)は「2026年 第69回⽇本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)の応募と推薦のお願い」を公表いたしました。
JCJ賞は1958年の創設以来、時代を切り拓く優れたジャーナリズム活動を顕彰する場として、みなさまの多⼤なるご⽀援とともに歩んでまいりました。
つきましては、本年も貴媒体・貴記者における特筆の活動について、ぜひJCJ賞へ推薦をいただけますようお願い申し上げます。
また、来年には70回を数える本賞の趣旨をご理解いただき、JCJ賞の応募要項を貴媒体で広くご紹介いただけますと幸いです。
2026年3⽉23⽇⽇本ジャーナリスト会議
〈ジャンルと応募資格〉
. 新聞、放送、出版、ネットメディアの各部⾨のほか、映像作品、市⺠運動や地域活動なども対象とします。個⼈・グループを問わず、提出期限までの1年以内に発表された作品(連載を含む)が応募できます。⾃薦・他薦いずれも受け付けます。
〈提出していただく作品〉
■新聞(雑誌を含む)
提出物:掲載記事のPDFファイル(PDF化が困難な場合は現物ないし現物のコピー)
・1作品ごとにエントリーシートを添えてメール、郵送/宅配便で送付
■ 放送・映像作品
提出物:MP4形式の動画ファイル、または再⽣・ダウンロード可能なURL
・1作品ごとにエントリーシートを添えてメールで送付
・DVD、ブルーレイでの提出も可(郵送/宅配便)
・オンライン応募フォームから MP4 をアップロード可能
■ 出版
提出物:書籍の現物(1冊)
・1作品ごとにエントリーシートを同封し、郵送/宅配便で送付
・出版物はオンライン応募フォームの対象外
■ネットメディア
提出物:閲覧可能なURL、または作品データ
2026年第69回⽇本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募と推薦のお願い
■ 出版
提出物:書籍の現物(1冊)
・1作品ごとにエントリーシートを同封し、郵送/宅配便で送付
・出版物はオンライン応募フォームの対象外
■ネットメディア
提出物:閲覧可能なURL、または作品データ
2026年第69回⽇本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募と推薦のお願い
⽇本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募要項
1
2026年・第69回
日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)応募・推薦の開始
・1作品ごとにエントリーシートを添えてメールで送付
・オンライン応募フォームからURL や動画ファイル、PDF等をアップロード可能
〈オンライン応募フォームについて〉
映像作品などの提出をよりスムーズに⾏えるよう、今年よりオンライン応募フォームを追加
しました。
・複数ファイル、複数回のアップロードに対応
・1回の送信で合計2GBまでアップロード可能
・従来の郵送、メールでの応募もこれまで通り受け付けます
〈エントリーシートについて〉
オンライン応募フォームを使わない場合はエントリーシートをJCJホームページ
(https://jcj.gr.jp/2026_jcjaward/)からダウンロードの上、記⼊しお送り下さい
提出期限・提出先・問い合わせ先
〈提出期限〉
2026年6⽉1⽇(⽉)必着郵送の場合は当⽇消印有効
〈提出先あて先、メールアドレス〉
〒101-0061 東京都千代⽥区神⽥三崎町3-10-15 富⼠ビル501号
⽇本ジャーナリスト会議「JCJ賞」応募作品係
応募受け付けメール:office@jcj.gr.jp
〈注意事項〉
・応募作品は返却いたしません。
・選考経過、理由などについてのお問い合わせには応じておりません。
・選考結果は、機関紙『ジャーナリスト』やJCJホームページに掲載するほか、各メディアへも公表し、贈賞式の模様とあわせて広く紹介していただく予定です。
・選考結果は9⽉上旬頃に公表を予定、贈賞式は10⽉上旬を予定しています。
〈問い合わせ先〉
JCJ事務所(受付:⽉・⽔・⾦曜⽇ 13時〜17時)電話:03-6272-9781 FAX:03-6272-9782
Eメール:office@jcj.gr.jp JCJホームページ:https://jcj.gr.jp
本リリース掲載:https://jcj.gr.jp/2026_jcjaward/
⽇本ジャーナリスト会議(JCJ)
JCJ事務局⻑古川英⼀
平素より、⽇本ジャーナリスト会議(JCJ)の活動にご理解とご協⼒を賜り、⼼より御礼申し上げます。
このたび、⽇本ジャーナリスト会議(JCJ)は「2026年 第69回⽇本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)の応募と推薦のお願い」を公表いたしました。
JCJ賞は1958年の創設以来、時代を切り拓く優れたジャーナリズム活動を顕彰する場として、みなさまの多⼤なるご⽀援とともに歩んでまいりました。
つきましては、本年も貴媒体・貴記者における特筆の活動について、ぜひJCJ賞へ推薦をいただけますようお願い申し上げます。
また、来年には70回を数える本賞の趣旨をご理解いただき、JCJ賞の応募要項を貴媒体で広くご紹介いただけますと幸いです。
2026年3⽉23⽇⽇本ジャーナリスト会議
〈ジャンルと応募資格〉
. 新聞、放送、出版、ネットメディアの各部⾨のほか、映像作品、市⺠運動や地域活動なども対象とします。個⼈・グループを問わず、提出期限までの1年以内に発表された作品(連載を含む)が応募できます。⾃薦・他薦いずれも受け付けます。
〈提出していただく作品〉
■新聞(雑誌を含む)
提出物:掲載記事のPDFファイル(PDF化が困難な場合は現物ないし現物のコピー)
・1作品ごとにエントリーシートを添えてメール、郵送/宅配便で送付
■ 放送・映像作品
提出物:MP4形式の動画ファイル、または再⽣・ダウンロード可能なURL
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・DVD、ブルーレイでの提出も可(郵送/宅配便)
・オンライン応募フォームから MP4 をアップロード可能
■ 出版
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■ネットメディア
提出物:閲覧可能なURL、または作品データ
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■ 出版
提出物:書籍の現物(1冊)
・1作品ごとにエントリーシートを同封し、郵送/宅配便で送付
・出版物はオンライン応募フォームの対象外
■ネットメディア
提出物:閲覧可能なURL、または作品データ
2026年第69回⽇本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募と推薦のお願い
⽇本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞) 応募要項
1
2026年・第69回
日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)応募・推薦の開始
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・オンライン応募フォームからURL や動画ファイル、PDF等をアップロード可能
〈オンライン応募フォームについて〉
映像作品などの提出をよりスムーズに⾏えるよう、今年よりオンライン応募フォームを追加
しました。
・複数ファイル、複数回のアップロードに対応
・1回の送信で合計2GBまでアップロード可能
・従来の郵送、メールでの応募もこれまで通り受け付けます
〈エントリーシートについて〉
オンライン応募フォームを使わない場合はエントリーシートをJCJホームページ
(https://jcj.gr.jp/2026_jcjaward/)からダウンロードの上、記⼊しお送り下さい
提出期限・提出先・問い合わせ先
〈提出期限〉
2026年6⽉1⽇(⽉)必着郵送の場合は当⽇消印有効
〈提出先あて先、メールアドレス〉
〒101-0061 東京都千代⽥区神⽥三崎町3-10-15 富⼠ビル501号
⽇本ジャーナリスト会議「JCJ賞」応募作品係
応募受け付けメール:office@jcj.gr.jp
〈注意事項〉
・応募作品は返却いたしません。
・選考経過、理由などについてのお問い合わせには応じておりません。
・選考結果は、機関紙『ジャーナリスト』やJCJホームページに掲載するほか、各メディアへも公表し、贈賞式の模様とあわせて広く紹介していただく予定です。
・選考結果は9⽉上旬頃に公表を予定、贈賞式は10⽉上旬を予定しています。
〈問い合わせ先〉
JCJ事務所(受付:⽉・⽔・⾦曜⽇ 13時〜17時)電話:03-6272-9781 FAX:03-6272-9782
Eメール:office@jcj.gr.jp JCJホームページ:https://jcj.gr.jp
本リリース掲載:https://jcj.gr.jp/2026_jcjaward/
⽇本ジャーナリスト会議(JCJ)
JCJ事務局⻑古川英⼀
2026年03月23日
【おすすめ本】〈漁業危機〉の深窓に切り込み 支援強化へ具体的提言=栩木 誠(元日経新聞編集委員)
「水産王国日本」と評されたのは、はるか昔のこと。世界的に魚人気が高まり、漁獲量が過去最高を記録する中で、全く取り残されているのが現状だ。「このままでは、30年後には漁業者がいなくなり、日本の食卓から国産魚が消える」との声も聞かれるほどである。
コメなど農業と共に、「日本人の食」を支えてきた、日本漁業がどうしてここまで衰退の道を強いられてきたのか。こうした〈漁業危機〉の深層に、鋭く切り込んだのが本書である。
危機招来の要因について、メディアなどでは、とかく乱獲や資源減少、海流変化などを挙げがちだった。しかし事はそう単純ではない。地球温暖化の影響に加えて、担い手不足、操業コストの上昇、周辺国・地域との競合激化、海洋環境の悪化などの諸要因が、複合的に絡んでいるのである。だが同様の危機に瀕する農業と同様、政府は全くの「無為無策」、むしろ状況の悪化を促しているのが現状だ。
農業とあわせ日本の食料安全保障を大きく揺るがす漁業危機に対応するために、いま何をなすべきか。著者は、経済学者の宇沢弘文氏が唱えた、「社会的共通資本」の理論に準拠し、「(漁村、漁業の)保護を社会的費用と捉え、人間社会の豊かさを保ったまま未来の子供たちに遺さなければならない」と強調。
欧州などの先例に学び漁業者への直接支払い、国の水産物価格の保証など、具体的支援強化の重要性を指摘する。
加えて、目先だけで安い輸入食品に走るのではなく「長い目で見た未来のために、進んで国産食品そして国産水産物を選んで消費する、そういう倫理的で賢明な消費者が増える」ことに強い期待をかける。(新潮新書 900円)
コメなど農業と共に、「日本人の食」を支えてきた、日本漁業がどうしてここまで衰退の道を強いられてきたのか。こうした〈漁業危機〉の深層に、鋭く切り込んだのが本書である。
危機招来の要因について、メディアなどでは、とかく乱獲や資源減少、海流変化などを挙げがちだった。しかし事はそう単純ではない。地球温暖化の影響に加えて、担い手不足、操業コストの上昇、周辺国・地域との競合激化、海洋環境の悪化などの諸要因が、複合的に絡んでいるのである。だが同様の危機に瀕する農業と同様、政府は全くの「無為無策」、むしろ状況の悪化を促しているのが現状だ。
農業とあわせ日本の食料安全保障を大きく揺るがす漁業危機に対応するために、いま何をなすべきか。著者は、経済学者の宇沢弘文氏が唱えた、「社会的共通資本」の理論に準拠し、「(漁村、漁業の)保護を社会的費用と捉え、人間社会の豊かさを保ったまま未来の子供たちに遺さなければならない」と強調。
欧州などの先例に学び漁業者への直接支払い、国の水産物価格の保証など、具体的支援強化の重要性を指摘する。
加えて、目先だけで安い輸入食品に走るのではなく「長い目で見た未来のために、進んで国産食品そして国産水産物を選んで消費する、そういう倫理的で賢明な消費者が増える」ことに強い期待をかける。(新潮新書 900円)
2026年03月22日
【追悼】JCJ代表委員 隅井孝雄さん逝去 「メディアは政治を変える一翼を担う」
2000年からJCJ代表委員を務められた隅井孝雄さんが誤嚥性肺炎で、2月13日亡くなった。90歳だった。19日、美沙子夫人が喪主となり葬儀が行われた。
隅井さんは1936年東京・杉並の出身。国際基督教大学(ICU)卒業後1958年に日本テレビに入社、編成、広報のほか、報道局外報部などで記者活動に従事した。
民放労連などが63年に結成したマスコミ労組共闘会議の事務局長や、国際映画放送労組連盟(FISTAV)の副議長などを務めた。
隅井さんは、マスコミ労組共闘会議事務局長時代に「マスコミを国民のものに」のスローガンを掲げ、竹村富弥(民放労連委員長)、加藤親至(新聞労連委員長)、楢橋国武(出版労連)各議長の下で、マスコミ労働運動をメディア批判活動に高めることに取り組むとともに、一貫して市民の中に運動を広げる活動の中心を担った。
同共闘会議の事務局長退任後の86年には、NTVインターナショナル社に出向、NTVアメリカ社社長(在ニューヨーク)を務めた。また、99年には京都学園大学教授に就任(2006年退任)。
著書に『テレビCMと子どもたち』(81年あゆみ出版)、『ニューメディア最前線』(83年大月書店)、『マンハッタンTVのぞき窓』(89年リベルタ出版)、『隅井孝雄のメディアウォッチ 3・11から安保法制まで』など。共著書に『テレビを子どもの味方に 国際児童年の新テーマ』(現代史出版会、79年)などがある。
「メディアは覚悟を持って政治を変える一翼を担う必要があります」
生前のメッセージを紹介し、故人の思いを伝えさせていただきたい。
謹んでご冥福をお祈りする。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
2026年03月21日
【リレー時評】変わる政治、変わらぬ沖縄の民意=黒島 美奈子(JCJ沖縄世話人)
とうとうここまできたか―というのが正直な感想だ。
さる8日に投開票が行われた衆院選の結果。小選挙区で沖縄1〜4区は自民候補が全勝した。小選挙区制が導入された以降初めてとなる。自民全勝は中選挙区時代にもなかったから復帰後初の事態でもある。
本土ほどの熱狂はなかったものの、沖縄にも確かに「風」は吹いていた。これまで2区で6回立候補し、今回初めて小選挙区を制した宮崎政久氏の勝因の一つは高市早苗政権への期待だ。宮崎氏は前回から2万票余り伸ばし7万票超を獲得した。
ただ、「高市旋風」だけが敗北の原因ではない。2区は米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市や、嘉手納基地がまたがる嘉手納町、北谷町が含まれる。沖縄の基地問題を象徴する地域だ。日米政府が、名護市辺野古への移設計画を本格化させて以降は「オール沖縄」勢力が誕生する以前から移設に反対する候補者が当選してきた。
そうした地で選挙を前に表面化したのが、オール沖縄の亀裂だった。
前回、社民党候補だった新垣邦男氏が中道改革連合から立候補。これに対抗して社民は元職の瑞慶覧長敏氏を立てた。移設反対の候補が分裂し、票も割れた。
2氏の得票数を足すと宮崎氏を上回る。2区では参政党候補者も反対の立場で、それを加味すれば「辺野古ノー」はさらに多い。敗北の責任はひとえに党利党略に溺れ民意をすくえなかった政党・政治にある。
本土と違い今年が「選挙イヤー」の沖縄では秋にも県知事選を迎える。復帰前から「保守対革新」の対立構図が続いてきた。辺野古の争点化以降は「自公対オール沖縄」の構図が続く。目下の関心事は衆院選の結果がこの構図にどう影響するかにある。
オール沖縄側は立憲民主党、共産党、社民、社大党を軸に一時はれいわ新選組まで広げた。しかし国政選挙でまず、れいわが抜けたのをはじめ、中道の結成は立民だけでなく社民との連携にも影響を及ぼしている。
対する自民は衆院選での成功体験を元に日本維新の会、国民民主党、参政などこれまで袂を分かってきた保守層の取り込みを進める。自公の選挙協力はもともと沖縄から始まった。名護市長選のように「辺野古あいまい作戦」をとれば、公明も容易に乗るだろう。
衆院選で見えたのは「果たしてオール沖縄はいったいどちらの方なのか」というほどの政治の地殻変動だ。
一方、SACO合意から30年たっても民意は底堅い。背景には変わらぬ基地負担がある。近年は水道水のPFAS汚染などこれまで見えなかった新たな「負担」も判明した。日米政府が基地からの汚染と認めず、何の対応もとらないことに県民は憤っている。
今なお民意をすくう政治が求められている。私たち報道も諦めるわけにはいかない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
さる8日に投開票が行われた衆院選の結果。小選挙区で沖縄1〜4区は自民候補が全勝した。小選挙区制が導入された以降初めてとなる。自民全勝は中選挙区時代にもなかったから復帰後初の事態でもある。
本土ほどの熱狂はなかったものの、沖縄にも確かに「風」は吹いていた。これまで2区で6回立候補し、今回初めて小選挙区を制した宮崎政久氏の勝因の一つは高市早苗政権への期待だ。宮崎氏は前回から2万票余り伸ばし7万票超を獲得した。
ただ、「高市旋風」だけが敗北の原因ではない。2区は米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市や、嘉手納基地がまたがる嘉手納町、北谷町が含まれる。沖縄の基地問題を象徴する地域だ。日米政府が、名護市辺野古への移設計画を本格化させて以降は「オール沖縄」勢力が誕生する以前から移設に反対する候補者が当選してきた。
そうした地で選挙を前に表面化したのが、オール沖縄の亀裂だった。
前回、社民党候補だった新垣邦男氏が中道改革連合から立候補。これに対抗して社民は元職の瑞慶覧長敏氏を立てた。移設反対の候補が分裂し、票も割れた。
2氏の得票数を足すと宮崎氏を上回る。2区では参政党候補者も反対の立場で、それを加味すれば「辺野古ノー」はさらに多い。敗北の責任はひとえに党利党略に溺れ民意をすくえなかった政党・政治にある。
本土と違い今年が「選挙イヤー」の沖縄では秋にも県知事選を迎える。復帰前から「保守対革新」の対立構図が続いてきた。辺野古の争点化以降は「自公対オール沖縄」の構図が続く。目下の関心事は衆院選の結果がこの構図にどう影響するかにある。
オール沖縄側は立憲民主党、共産党、社民、社大党を軸に一時はれいわ新選組まで広げた。しかし国政選挙でまず、れいわが抜けたのをはじめ、中道の結成は立民だけでなく社民との連携にも影響を及ぼしている。
対する自民は衆院選での成功体験を元に日本維新の会、国民民主党、参政などこれまで袂を分かってきた保守層の取り込みを進める。自公の選挙協力はもともと沖縄から始まった。名護市長選のように「辺野古あいまい作戦」をとれば、公明も容易に乗るだろう。
衆院選で見えたのは「果たしてオール沖縄はいったいどちらの方なのか」というほどの政治の地殻変動だ。
一方、SACO合意から30年たっても民意は底堅い。背景には変わらぬ基地負担がある。近年は水道水のPFAS汚染などこれまで見えなかった新たな「負担」も判明した。日米政府が基地からの汚染と認めず、何の対応もとらないことに県民は憤っている。
今なお民意をすくう政治が求められている。私たち報道も諦めるわけにはいかない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
2026年03月20日
【お知らせ】JCJとして「立ち向かっていく」ということ=古川英一(JCJ事務局長)
一夜にして私たちの政治の風景は塗り変わりました。いま私たちは、呆然と立ちすくんでいるのではないでしょうか。東京でも大雪となった真冬の衆議院選挙は、自民党が単独で議席の3分の2余りを獲得しました。
解散する大義も必要もないこの選挙で、高市首相が訴えたのは「私を首相として選ぶのかどうか」「国論を二分するような政策実現させてほしい」というものでした。普通に考えれば、まずその政策を国会で論議したうえで、国民に信を問うのが筋でしょう。しかし高市首相は政策についても明確にしないまま、いわば白紙の委任状を出すように有権者に迫ったのです。こうした事に危機感を持つ人たちは警鐘を鳴らしましたが、選挙は「高市推し活」「人気投票」にすり替わり、おそらくは本人が想像していた以上の自民党の歴史的勝利となったのです。
ドイツの政治学者のカール・シュミットは「政治とは友と敵を峻別すること」と喝破しましたが、高市首相は今回の選挙でそれを見事に実践、今後の政権運営で「私に入れなかった」人たちは敵とみなし、国民を分断することを厭わないでしょう。
今回の選挙ではメディアの報道にも疑問が残りました。正月明け早々、読売新聞が「首相が衆院解散検討」と一面でスクープ、政府・自民党関係者ですら寝耳に水のことで激震が走りました。それからしばらくして高市首相は思わせぶりに記者会見、30分間、テレビのカメラを前に滔々と語りました。こうした経緯を見ると、読売のスクープは、結果的に観測気球となってアナウンス効果をあげ、高市首相の解散戦略の一翼を担ってしまったのではないか。メディアが権力をチェックするのではなく逆に権力に取り込まれて利用されてしまったのではないかと危惧するのです。。一方、高市人気が若い人たちを中心にSNSで拡散されたことは、公平な選挙の元でのSNSというメディア空間の在り方を、私たちに問うものとなりました。
戦後80年、日本がとにもかくにも守ってきた平和憲法のもとでの「戦争をしない国」は、高市政権のもとで「戦争ができる国」へと向けた動きが一層加速化していくことが現実味を帯びてきました。
「国論を二分する政策」の一つは安全保障の問題です。高市首相は選挙後の記者会見で、防衛費増額や、安保関連三文書の改定、非核三原則の見直し、国家情報局の設置、さらにスパイ防止法の制定などに取り組んでいくことを強調しました。「日本を強くする」という掛け声のもと、市民の自由は失われ、対話による世界平和の試みも封殺されていくでしょう。。
さらには憲法改正の発議ができる議席を確保した高市政権は念願の憲法改正にも意欲を示しています。そうなれば日本は「戦争をする国」へとさらに変容していくのです。それは戦後80年の平和国家の歩みを否定し、戦前へ回帰することになるのです。
私たちJCJは、ジャーナリストや市民が共に、メディア・ジャーナリズムを通して、平和で差別のない社会を目指す団体です。戦争へと向かう道の同伴者には決してなりません。そう思うと、いつまでも呆然としてはいられません。
「白紙委任状」をかざして、これから高市政権が推し進めようとする軍拡の動きに対して、JCJは市民との輪を広げながら立ち向かっていきましょう。決して諦めることなく。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
解散する大義も必要もないこの選挙で、高市首相が訴えたのは「私を首相として選ぶのかどうか」「国論を二分するような政策実現させてほしい」というものでした。普通に考えれば、まずその政策を国会で論議したうえで、国民に信を問うのが筋でしょう。しかし高市首相は政策についても明確にしないまま、いわば白紙の委任状を出すように有権者に迫ったのです。こうした事に危機感を持つ人たちは警鐘を鳴らしましたが、選挙は「高市推し活」「人気投票」にすり替わり、おそらくは本人が想像していた以上の自民党の歴史的勝利となったのです。
ドイツの政治学者のカール・シュミットは「政治とは友と敵を峻別すること」と喝破しましたが、高市首相は今回の選挙でそれを見事に実践、今後の政権運営で「私に入れなかった」人たちは敵とみなし、国民を分断することを厭わないでしょう。
今回の選挙ではメディアの報道にも疑問が残りました。正月明け早々、読売新聞が「首相が衆院解散検討」と一面でスクープ、政府・自民党関係者ですら寝耳に水のことで激震が走りました。それからしばらくして高市首相は思わせぶりに記者会見、30分間、テレビのカメラを前に滔々と語りました。こうした経緯を見ると、読売のスクープは、結果的に観測気球となってアナウンス効果をあげ、高市首相の解散戦略の一翼を担ってしまったのではないか。メディアが権力をチェックするのではなく逆に権力に取り込まれて利用されてしまったのではないかと危惧するのです。。一方、高市人気が若い人たちを中心にSNSで拡散されたことは、公平な選挙の元でのSNSというメディア空間の在り方を、私たちに問うものとなりました。
戦後80年、日本がとにもかくにも守ってきた平和憲法のもとでの「戦争をしない国」は、高市政権のもとで「戦争ができる国」へと向けた動きが一層加速化していくことが現実味を帯びてきました。
「国論を二分する政策」の一つは安全保障の問題です。高市首相は選挙後の記者会見で、防衛費増額や、安保関連三文書の改定、非核三原則の見直し、国家情報局の設置、さらにスパイ防止法の制定などに取り組んでいくことを強調しました。「日本を強くする」という掛け声のもと、市民の自由は失われ、対話による世界平和の試みも封殺されていくでしょう。。
さらには憲法改正の発議ができる議席を確保した高市政権は念願の憲法改正にも意欲を示しています。そうなれば日本は「戦争をする国」へとさらに変容していくのです。それは戦後80年の平和国家の歩みを否定し、戦前へ回帰することになるのです。
私たちJCJは、ジャーナリストや市民が共に、メディア・ジャーナリズムを通して、平和で差別のない社会を目指す団体です。戦争へと向かう道の同伴者には決してなりません。そう思うと、いつまでも呆然としてはいられません。
「白紙委任状」をかざして、これから高市政権が推し進めようとする軍拡の動きに対して、JCJは市民との輪を広げながら立ち向かっていきましょう。決して諦めることなく。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
2026年03月19日
【映画の鏡】戦争が残す深刻な心の傷『父と家族とわたしのこと』戦後80年、連鎖し続けるトラウマ=鈴木 賀津彦
c日本電波ニュース社
自民党が圧勝した衆院選後、改憲・軍拡へと勢いづく人々にこそ、このドキュメンタリーをぜひ観てもらい、考えてほしい。戦争は戦場だけでは終わらないことを。
終戦から80年、語られてこなかった心の傷は今も残る。「近年、帰還兵の多くが深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えていた事実が、ようやく明らかになりつつある」という。「癒されなかった心の傷は、DVや依存症という形で子や孫へと受け継がれることがあり、肉親間の断絶を引き起こすこともある。その連鎖を、いかにして断ち切ることができるのか」(作品説明から)
このテーマを島田陽磨監督(日本電波ニュース社)は、戦争PTSDの帰還兵の父から激しい虐待を受けて育った女性など、世代を超えて連鎖していくトラウマと向き合う3人の苦悩に密着し、掘り下げていく。戦争の傷跡は家族の記憶の中で今も続いているのだ。
前作の映画『生きて、生きて、生きろ。』では大震災と原発事故被害による福島での遅発性PTSDを追った島田監督。本作では時の政権から「戦地へ行け」と命じられ何人もの人を殺した兵士たちを、加害と被害の両面から捉え、帰還兵家族たちの「生きづらさ」の原因を問うていく。
「戦時中、天皇の軍隊に精神疾患は存在しないとして患者たちはその存在を隠蔽され、戦後も家族たちは誰にも相談できないまま口を閉ざしてきた」。その辛く悲しい事実を掘り起こし明らかにすることが、今こそ求められている。
3月14日から東京・ポレポレ東中野で公開、順次全国上映。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
自民党が圧勝した衆院選後、改憲・軍拡へと勢いづく人々にこそ、このドキュメンタリーをぜひ観てもらい、考えてほしい。戦争は戦場だけでは終わらないことを。
終戦から80年、語られてこなかった心の傷は今も残る。「近年、帰還兵の多くが深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えていた事実が、ようやく明らかになりつつある」という。「癒されなかった心の傷は、DVや依存症という形で子や孫へと受け継がれることがあり、肉親間の断絶を引き起こすこともある。その連鎖を、いかにして断ち切ることができるのか」(作品説明から)
このテーマを島田陽磨監督(日本電波ニュース社)は、戦争PTSDの帰還兵の父から激しい虐待を受けて育った女性など、世代を超えて連鎖していくトラウマと向き合う3人の苦悩に密着し、掘り下げていく。戦争の傷跡は家族の記憶の中で今も続いているのだ。
前作の映画『生きて、生きて、生きろ。』では大震災と原発事故被害による福島での遅発性PTSDを追った島田監督。本作では時の政権から「戦地へ行け」と命じられ何人もの人を殺した兵士たちを、加害と被害の両面から捉え、帰還兵家族たちの「生きづらさ」の原因を問うていく。
「戦時中、天皇の軍隊に精神疾患は存在しないとして患者たちはその存在を隠蔽され、戦後も家族たちは誰にも相談できないまま口を閉ざしてきた」。その辛く悲しい事実を掘り起こし明らかにすることが、今こそ求められている。
3月14日から東京・ポレポレ東中野で公開、順次全国上映。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
2026年03月18日
【月刊マスコミ評・新聞】新聞に大義なき選挙加担の自覚は=六光寺 弦
実績がない高市早苗首相が仕掛けた「人気投票」の衆院選で、自民党が単独で3分の2超の議席を得た。露骨に「白紙委任」を求める手法は大義を欠いていたのに、選挙は強行され「サナエ推し」の情感の高まりに、問われるべきだった「高市政治の危険性」は見えにくくなっていった。この流れに自らの政治報道、選挙報道が加担したのではないか、との自覚は新聞にあるだろうか。
始まりは1月9日夜。読売新聞がデジタル版で、高市首相が衆院解散を検討と報じた。10日付の朝刊紙面では、早版(12版)から1面トップで「首相、衆院解散検討」「2月上中旬投開票」の見出しが躍った。総合面にも「政権安定へ勝負」「高支持率 慎重論振り切る」の記事。批判も疑義もなく、むしろ決断への賞賛がにじんでいた。
10日には他紙も追随。野党各党も選挙の準備に入ることを表明。選挙実務の面でも、都道府県の選挙管理委員会事務局に対し、総務省が準備を進めるよう事務連絡を出した。
高市首相が沈黙したまま、衆院解散と選挙の実施は既成事実になった。首相が記者会見したのは19日。衆院解散のわずか4日前だ。
選挙戦に入ると新聞通信各社は情勢調査の結果を相次いで報道。「与党優勢」が伝えられる中で、朝日新聞は2月1日夜、デジタル版で「自維 300議席超うかがう 中道半減も」と報じた。
投票日まで1週間。朝日の記事は、投票態度を明らかにしていない人が選挙区で4割、比例区で3割おり、情勢は動く可能性があるとしていた。結果的に、自民党の獲得議席はこの予測を軽々と超えた。
NHKの報道によると、高市首相のXのフォロワーは2月1日以降急増した。「300超」の予測報道の始まりと時期が符合する。有権者の「勝ち馬に乗る」心理を誘発した可能性はないか、検証が必要ではないか。
高市政治の危険性に焦点を当てた報道もあった。「白紙委任」に警鐘を鳴らす社説もあったが、「新聞離れ」が進む中で、どこまで社会に届いたか。そんな中で、大義のない選挙に道が開かれ、独裁と戦争国家への転換が危惧される結果になったことに加担したとすれば、それこそが本当の新聞の危機ではないか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
始まりは1月9日夜。読売新聞がデジタル版で、高市首相が衆院解散を検討と報じた。10日付の朝刊紙面では、早版(12版)から1面トップで「首相、衆院解散検討」「2月上中旬投開票」の見出しが躍った。総合面にも「政権安定へ勝負」「高支持率 慎重論振り切る」の記事。批判も疑義もなく、むしろ決断への賞賛がにじんでいた。
10日には他紙も追随。野党各党も選挙の準備に入ることを表明。選挙実務の面でも、都道府県の選挙管理委員会事務局に対し、総務省が準備を進めるよう事務連絡を出した。
高市首相が沈黙したまま、衆院解散と選挙の実施は既成事実になった。首相が記者会見したのは19日。衆院解散のわずか4日前だ。
選挙戦に入ると新聞通信各社は情勢調査の結果を相次いで報道。「与党優勢」が伝えられる中で、朝日新聞は2月1日夜、デジタル版で「自維 300議席超うかがう 中道半減も」と報じた。
投票日まで1週間。朝日の記事は、投票態度を明らかにしていない人が選挙区で4割、比例区で3割おり、情勢は動く可能性があるとしていた。結果的に、自民党の獲得議席はこの予測を軽々と超えた。
NHKの報道によると、高市首相のXのフォロワーは2月1日以降急増した。「300超」の予測報道の始まりと時期が符合する。有権者の「勝ち馬に乗る」心理を誘発した可能性はないか、検証が必要ではないか。
高市政治の危険性に焦点を当てた報道もあった。「白紙委任」に警鐘を鳴らす社説もあったが、「新聞離れ」が進む中で、どこまで社会に届いたか。そんな中で、大義のない選挙に道が開かれ、独裁と戦争国家への転換が危惧される結果になったことに加担したとすれば、それこそが本当の新聞の危機ではないか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2026年2月25日号
2026年03月17日
【出版トピック】北海道新聞社説「小学館の姿勢 性加害者の擁護許されぬ」 3/15付
学びや文化の発展を担う出版社として、人権感覚が著しく欠如していると疑わざるを得ない。性加害歴のある漫画家の起用を続けた小学館のことだ。
札幌市内の通信制高校を卒業した女性が在学中、教員だった漫画家男性からの性被害で精神的苦痛を受け損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は男性に1100万円の支払いを命じた。
判決後、小学館は男性の性加害を把握しながら作品を掲載していたと発表した。加害者を擁護していたことになる。女性は深く傷つき今も苦しんでいる。小学館の対応は許されない。
訴訟で男性側は「同意があった」と反論した。一方、原告は性的目的を満たすため優しく手なずけるグルーミングの手口だったと主張し、判決も「男性が自ら優位に立つ関係を形成し性的欲求に応じさせた」とした。
同様の犯罪の多発を受け、2022年施行の「教員による児童生徒性暴力防止法」は同意の有無を問わず児童生徒との性行為を禁止した。「同意があった」との弁解は通用しない。
被害を受けた女性をさらにおとしめたのが小学館の対応だ。
男性は20年、同じ女性への性加害で罰金刑を受けた。小学館の漫画配信サービス「マンガワン」編集部は男性の作品の掲載を中止した。
その後、和解協議に加わった担当編集者が性加害の口外禁止などの条件を示した。女性は納得できず22年に提訴すると、編集部は男性を別のペンネームで新連載の原作者に起用した。
小学館は判決後、「起用判断に瑕疵(かし)があった」として連載の配信を停止し謝罪した。第三者委員会で検証するという。
性暴力を引き起こした元タレントを擁護したフジテレビ問題とも構図が重なる。人権より漫画家から得られる利益を優先したも同然で悪質だ。
問題発覚後も後手の対応が続く。当初、社員らでつくる調査委員会で原因を究明するとしたが、複数の漫画家がマンガワンへの掲載中止を求めるなど非難が強まり、第三者委の設置へと軌道修正を余儀なくされた。
性犯罪で有罪になった別の漫画家を起用するなど、女性の人権を軽視した事案が他にも判明した。検証を要する項目は多い。
昨年、新潮社の「週刊新潮」に差別的なコラムが載った。大手出版社で人権感覚が問われる問題が続いたことは深刻だ。
とりわけ小学館は子ども向けの書籍が評価されてきた。高校生の性被害を軽視し、信頼は失墜した。そのことを自覚し、検証を尽くす必要がある。
札幌市内の通信制高校を卒業した女性が在学中、教員だった漫画家男性からの性被害で精神的苦痛を受け損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は男性に1100万円の支払いを命じた。
判決後、小学館は男性の性加害を把握しながら作品を掲載していたと発表した。加害者を擁護していたことになる。女性は深く傷つき今も苦しんでいる。小学館の対応は許されない。
訴訟で男性側は「同意があった」と反論した。一方、原告は性的目的を満たすため優しく手なずけるグルーミングの手口だったと主張し、判決も「男性が自ら優位に立つ関係を形成し性的欲求に応じさせた」とした。
同様の犯罪の多発を受け、2022年施行の「教員による児童生徒性暴力防止法」は同意の有無を問わず児童生徒との性行為を禁止した。「同意があった」との弁解は通用しない。
被害を受けた女性をさらにおとしめたのが小学館の対応だ。
男性は20年、同じ女性への性加害で罰金刑を受けた。小学館の漫画配信サービス「マンガワン」編集部は男性の作品の掲載を中止した。
その後、和解協議に加わった担当編集者が性加害の口外禁止などの条件を示した。女性は納得できず22年に提訴すると、編集部は男性を別のペンネームで新連載の原作者に起用した。
小学館は判決後、「起用判断に瑕疵(かし)があった」として連載の配信を停止し謝罪した。第三者委員会で検証するという。
性暴力を引き起こした元タレントを擁護したフジテレビ問題とも構図が重なる。人権より漫画家から得られる利益を優先したも同然で悪質だ。
問題発覚後も後手の対応が続く。当初、社員らでつくる調査委員会で原因を究明するとしたが、複数の漫画家がマンガワンへの掲載中止を求めるなど非難が強まり、第三者委の設置へと軌道修正を余儀なくされた。
性犯罪で有罪になった別の漫画家を起用するなど、女性の人権を軽視した事案が他にも判明した。検証を要する項目は多い。
昨年、新潮社の「週刊新潮」に差別的なコラムが載った。大手出版社で人権感覚が問われる問題が続いたことは深刻だ。
とりわけ小学館は子ども向けの書籍が評価されてきた。高校生の性被害を軽視し、信頼は失墜した。そのことを自覚し、検証を尽くす必要がある。
2026年03月16日
【JCJオンライン講演会】「調査報道の現在地と展望」講師:高田昌幸氏(東京都市大学メディア情報学部教授)4月5日(日)午後2時から4時
■開催趣旨
調査報道は、政治問題や事件などに対し、メディアやジャーナリストが独自の取材を通じ「新事実」を突き止める報道スタイルだ。警察や官庁、企業などが情報を提供する「発表報道」とはまったく異なる。かつては新聞と放送の専売特許だったが、時間とカネがかかりすぎると会社自体がしり込み。その代わりに今は週刊文書や赤旗、ウェブメディアが目玉記事として積極的に取り組んでいる。権力監視を怠る大手メディアへの批判は止まないが、調査報道はどっこい生きている。北海道新聞社時代にJCJ賞を2回(96年、2004年)、昨年ネットメディア部門で3回目のJCJ賞を受賞した高田昌幸氏(東京都市大学メディア情報学部教授)は『調査報道の戦後史1945−2025』(旬報社)を昨年12月に刊行した。調査報道の威力と社会的な役割を高田氏が語る。
■講演者プロフィール:高田 昌幸さん
1960年生まれ。東京都市大学メディア情報学部教授
北海道新聞記者などを経て、2017年度から現職。2004年、北海道警察裏金問題追及の取材班代表として、新聞協会賞、菊池寛賞など受賞。著書に『調査報道の戦後史 1945−2025』(旬報社、2025年)、『真実 新聞が警察に跪いた日』(角川文庫、2014年)ほか。共著に『権力VS調査報道』(旬報社、2011)、『権力に迫る「調査報道」』(同、2016年)、『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』(産学社、2012年)ほか。
■zoomにてオンライン 見逃し聴取用記録動画の配信有り。
■参加費:500円
参加希望の方はPeatix(https://jcjonline0405.peatix.com)で参加費をお支払いください。
(JCJ会員は参加費無料。JCJ会員MLからアクセスURLが送られます。参加にあたり連絡は不要です。)
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
03–6272–9781(月水金の13時から17時まで)
https://jcj.gr.jp/


