2025年12月27日

【焦点】「2国家解決」困難 ガザ 無力な対米追従の日本 毎日新聞 大治朋子氏講演=橋詰雅博

 
★大治朋子記者(毎日新聞).jpg

 ガザ紛争の停戦はまやかしか、それともかの地に希望の光が差し込こむのか――イスラエルによるガザ地区でのパレスチナ人のジェノサイド(集団殺害)に国際社会は非難。これに呼応し英、仏、加、豪のG7がパレスチナ国家承認を国連総会で表明した。日米は非承認だが、国連加盟約8割はパレスチナ国家を承認。トランプ米大統領もノーベル平和賞欲しさからかガザ紛争に和平介入し恒久的停戦に向けて進んでいるかのように見える。国連で採択のパレスチナとイスラエルが共存する「2国家解決」は結実するのか。エルサレム支局長とテルアビブ大学大学院時代などを含めイスラエルに約6年半暮した毎日新聞専門編集委員・大治朋子氏=写真=は10月25日JCJオンラン講演で和平の実現性やイスラエル人の国家観、日本にできることはなどを報告した。

旧約聖書を信じる

 ガザ紛争の根源はイスラエルがパレスチナに建国し、パレスチナ人は土地を奪われ難民に―これが一般的な歴史認識だろう。イスラエルは「占領した」に対し二つの理由を挙げて反論していると大治氏はいう。ユダヤ系イスラエル人(人口の約73%)は、ユダヤ教の経典、旧約聖書から立ち上げられた独自の物語の歴史認識を小学生低学年から学んでいる。簡単に言えば、古代イスラエル王国(紀元前1000年ごろから同922年、今と同じエルサレムが首都)は、現在のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸にユダヤ民族が築いたのだから、ユダヤ人が住む権利があるという信仰だ。
大治氏は「来日のイスラエル経済産業大臣に『西岸地区でイスラエル軍が破壊行為していますね』と尋ねると、『旧約聖書ではこの土地はユダヤの民のものです』と答えました。イスラエルではこの歴史認識が共有されている」と述べた。 
これが一つ目の理由だが、事実と物語がミックスの旧約聖書が根拠では、非ユダヤ民族は納得できないだろう。

悪いのはどっち?

 二つ目は1948年イスラエルの独立に反発したアラブ諸国との第一次中東戦争を止めるため国連で採択されたパレスチナの分割案をアラブ側が拒否したこと。イスラエルは国連案に従わなかった「アラブ側が悪い」としている。しかしこの案はイスラエル側の土地の方が多く、「『いきなり来て建国し、土地を半分も取っちゃって』とパレスチナが思うのは当然でしょう」と大治氏は語った。
 この案を作った国連を批判すべきではないか。
第4次まで続いた中東戦争に勝つたびにイスラエルは土地を拡大。93年のイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)がパレスチナ国家建設に協力して取り組む「オスロ合意」は守られず、事実上、破綻。かくしてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸とパレスチナ組織ハマスが実行支配するガザ地区の2カ所がイスラエルに点在した。

日本の現実を痛感

23年10月7日のハマス戦闘員による越境攻撃でイスラエルも「安住の地」とは言えなくなったとするユダヤ人のハマスとガザ住民への怒りは消えない。「『ガザに無実の民間人はいない』と回答した人が約3分の2占めたイスラエルの世論調査結果もあります」(大治氏)。
「2国家解決」について、大治氏は「イスラエルのネタニヤフ連立極右政権も国民も「『国家として承認しパレスチナが軍隊を持ったらもっと危なくなるじゃないか』という感覚を持っています。2国家解決の選択肢は全くない」と指摘した。
イスラエルとは経済交流し、パレスチナには資金・物資・人材の支援をする日本は解決に向けて何かできないのか。大治氏は「対米従属の日本が独自にやるというのはまずない」と断言した。
日本の対米追従の現実を改めて思い知らされた。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年11月25日号 
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2025年12月26日

【NHK】会長「自立的選出」をと訴え 「指名部会」前に行動=河野 慎二

 NHK元職員や視聴者などで作る「市民と共に歩み、自立したNHK会長を求める会」は11日、「政権の指名する会長候補者をそのまま追認する人事は許さない」と訴え、東京渋谷のNHK前での街頭行動に取り組んだ。
 NHK現会長稲葉延雄氏の任期満了は来年1月。会は、安倍政権時の総務大臣で、放送局を「停波発言」で恫喝した高市早苗氏が首相になり、NHK会長人事への干渉が一段と危惧されることからも行動に立ち上がった。

 NHK会長指名を巡っては「6期18年にわたって、誰が選んだかわからない形で財界出身者が会長になっている」(NHKOBの長井暁さん)現実がある。22年の稲葉氏の指名も「岸田首相が水面下で稲葉氏を口説き落とした」と新聞は報じた。
会は今年7月、経営委員会に「政権の意向を忖度せず透明性のある選考を求める」公開質問状を提出。経営委は「特定の個人の意見に左右されることなく、自立的に判断する」と回答してきた。
 それだけに、経営委員会が会への回答を欺くことなく、放送法の精神に則り、権力の介入を許さずNHKの自主自律を貫ける会長を選ぶことがより一層強く求められている。

 一方、NHK前行動に参加したジャーナリストの斎藤貴男さんは、今年8月放送のNHKスペシャル「シミュレーション・ドラマ、昭和16年夏、日本の敗戦」の「歴史修正」問題を報告した。
 番組は、近衛内閣の下、徹底的に日米の戦力を比較、「このまま戦争に入ると日本は100%負ける」という研究成果を発表した「総力戦研究所」の飯村所長と、政府がこれを黙殺し戦争に突き進んだ史実のドラマ化だが、斎藤さんは「飯村所長は研究所員に自由闊達な論議を促したが、ドラマでは非常に冷酷な卑劣漢で、部下に辛くあたり上司の東条英機に忖度する人物と描かれた」。そのため「飯村さん家族が『史実と違う』と、NHKへの訴訟準備を進める」事態となっていることを紹介した。

 斎藤さんは「歴史修正主義はネトウヨの専門と見ていたが、NHKでもまかり通ることを危惧する」「NHKの皆さん、ドラマも報道も志に違いはない。真っ当なジャーナリズムを進めてほしい」「そうでなければ、歴史を勝手に改ざんしようとする政治権力に介入を許す大義名分を与えてしまう。1日も早く信頼できるNHKに立ち戻ってほしい」と締めくくった。
 注目されるNHK経営委員会の次期会長選出指名部会協議は、来月大詰めを迎える。
 長井暁さんも「12月には経営委員会が自立的に選ぶことを期待する」と力を込めた。
           JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年11月25日号 
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2025年12月25日

【関西支部リポート】万博の成功とは何か 印象論ではない検証を=木下 功(ジャーナリスト)

5面・支部リポート写真_万博開催中も本格的な工事が進められる夢洲のIR用地.JPG
               万博中もIR用地工事が進む
 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに158の国・地域が参加した2025年大阪・関西万博が閉幕した。会期中の4月13日から10月13日までの184日間に訪れた一般来場者は2557万8986人。会場運営費は230億円から280億円の黒字の見通しと、関係者からは「成功」との声が上がる。
 一方で、会場建設費は当初計画の1250億円から1・9倍の2350億円まで膨張した。インフラ整備も含めた総費用に見合う成果はあったか、安全は確保できていたか、テーマにふさわしいレガシーとは何なのか、印象論でない検証が必要だ。
 25年日本国際博覧会協会(万博協会)の石毛博行事務総長は10月7日、成功の必要条件としていた「大きな事故を起こさない」「赤字を出さない」「できるだけ多くの人に来てもらう」の3点をクリアしたこと、厳しい世界情勢・経済環境の中で「大きなイベントをやり終えたこと」を成果に挙げた。
 SNSの後押しの中、多くの来場者が万博を楽しんだことは事実だが、全体の収支は未定で、跡地活用やレガシー継承も議論の段階だ。11の海外パビリオンの建設に関連して工賃未払いの相談があり、経営難の企業が出ている中、万博推進側が「成功」を喧伝するのは早計ではないか。
■安全確保検証は
 安全面で検証が必要な事例には、8月13日の大阪メトロ中央線停電トラブルがある。万博協会の推計では3万8千人が足止めされ、1万1千人が会場に泊まり、36人が救急搬送された。現場関係者は「雑踏事故を防ぐため帰宅困難者の安全を大阪府警が確保した」と話す。大事故にならなかったのは現場スタッフの奮闘だ。楽観視できる状況ではなかった。
 会場の夢洲へのアクセスルートは夢咲トンネルと夢舞大橋の二つ。来場者輸送の6割から7割を大阪メトロ中央線が担っており、足止め人数が拡大した。大阪湾を埋め立てた埋立地特有の軟弱地盤が工期遅れの一因との指摘もある。
多くの問題が夢洲という悪条件に起因する。夢洲開催の是非、IR・カジノとの関連も検証すべきだろう。
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年11月25日号 
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2025年12月24日

【JCJ声明】⾸相官邸幹部の「核保有発⾔」に強く抗議し、⼀刻も早い罷免を求める

  安全保障政策を担当する⾸相官邸幹部が、今⽉18⽇、個⼈の⾒解としつつ「⽇本 は核を保有すべきだ」と発⾔したことが明らかになった。
 ⽇本が堅持する「⾮核三原則」を踏みにじる発⾔であり、被爆地の広島・⻑崎の⼈ たちからは怒りの声が上がっている。 再び戦争を起こさないことを誓った⽇本ジャーナリスト会議(JCJ)は、この幹 部の発⾔に危機感を持ち強く抗議する。あわせて⾼市⾸相にこの幹部の⼀刻も早い罷 免を求める。

 「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」とする⾮核三原則は、原爆投下の惨状 を知る⽇本が⽣んだ、世界の指針だ。いま、核兵器禁⽌条約の批准国が増える中で、 ますます⼤事な平和原則となっている。
 ⽇本が核兵器を保有するには核不拡散条約(NPT)の脱退が前提になるが、ロシア の侵略や、トランプ⽶政権の不安定な核政策もあいまって、現下の国際情勢下での「平和国家」⽇本の脱退は各国のNPTからの「ドミノ脱退」を誘発し、最悪の核軍拡競 争さえ招きかねない愚挙である。

 この幹部の発⾔は記者団との「オフレコ」の場で起きたが、複数のメディアがあえて報道した。「オフレコ発⾔を了解も取らずに報じるのは問題」という批判もあるが、 発⾔を報じることに重い公共・公益性などがある場合には、市⺠の知る権利こそが優先される。
 そもそも報道の原則は実名であり、⽇本新聞協会なども「安易なオフレコ取材は厳 に慎むべき」としている。メディアには、発⾔をした幹部を明らかにすることが求められているのではないか。

 ⾼市政権では、⾼市⾸相⾃⾝が、台湾有事をめぐり軽率な「存⽴危機事態」発⾔を したほか、⾮核三原則の部分的な⾒直しについても否定していない。今回の幹部発⾔ も⾼市政権の極めて危険な歪みを現わしており、とてもこのまま⾒過ごすことはでき ない。
 各メディアが、戦後⽇本の平和主義に⾜場をしっかりと据えて、軍事国家へと暴⾛ しかねない⾼市政権の危険性を徹底的に追及していくことを期待していきたい。

2025年12月21日
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
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2025年12月23日

【リレー時評】「歴史的分析、評価」欠いた戦後80年=吉原 功(JCJ代表委員)

 毎日新聞の伊藤智永専門編集委員が「小和田氏の戦後80年批判」(9月20日付朝刊コラム「土記」)と題し、元国際司法裁判所長官の小和田恒氏が9月12日講演し、「戦後80年報道のあり方に直球の疑問を投じた」ことを紹介した。

 日本記者クラブの「各界長老に『戦後80年を問う』」企画に応じての講演を伊藤氏は「『カミソリ』衰えず」と評した。
 登壇の小和田氏は、日本国民受難の体験に集中したメディアの戦後80年報道を「それが悪いというのではないが、全てなのか。日本に加害者の立場はなかったのか」と問い、「外交は相手の見方を踏まえた外交の技術」「被害者と加害者の見方は相当違う」と指摘。戦後80年の歴史が日本外交に課した3つの課題と、それが並行し絡み合って進んできたことを説いて「戦争に至った日本の行動に対する厳格な歴史的分析と評価こそ80年になされねばならなかったと感じます」と結んだ。

 まさにその通りであり、メディアは「日本の行動」に自らの報道が含まれることも忘れてはならないであろう。
伊藤氏はコラムで「小和田氏はそれ以上言わないが」と、断りながらも「戦後80年報道も、長く深く時代を見通す洞察が問われた」「戦後処理問題に『戦後70年安倍晋三首相談話』がもくろんだ虫のいい終わりはない。そんな幼稚な了見で外交はできない」と、さらに一歩踏み込んだ。                                      

 日本にとっての「戦後80年」は、中国にとっては「抗日戦争勝利80年」である。それを記念し北京で9月3日実施された軍事パレードは日本でも大きく報道された。中露朝のトップが公式の場で66年ぶりに勝利を称揚したのだから、メディアがその軍事的脅威、米国に代わる新たな国際秩序形成への意気込みなどに注目するのは当然だが、なぜ「抗日」なのかの深い洞察が報道には読み取れない。それこそが最も大きな問題であろう。

 9月18日は、かつて日本軍(関東軍)が鉄道を爆破し、それを中国軍の仕業として戦線を拡大した柳条湖事件の日である。「731部隊」の細菌戦や人体実験もその後の展開の中で行われた。日本メディアは中国の「抗日」軍事パレードを大きく報じたが、総じて「反日キャンペーン」の一環として捉えていた。「731部隊展示館」を取材し、「こうした展示を見て、中国人はどう受け止めているのか」と書いた記者がいたが、その問いは自らに対して発するべきだったのではないか。

 今年1月、岩波ジュニア新書として出版された宇田川幸大著『歴史的に考えること 過去と対話し、未来をつくる』は、「ジュニア」に限らずジャーナリストにも読んでもらいたい本だ。メディアの「戦後80年企画」担当者たちが「わたしたちは近代日本の戦争の『後』を生きている」とする本書を読んでいたら、報道はより「長く深く時代を洞察」するものになっていただろう
         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年11月25日号 
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2025年12月22日

【おすすめ本】加藤 喜之『福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会』―トランプ政権の支持基盤、特異な宗教集団の実像=福嶋 亮大(立教大学教授)

 今の米国は内戦の可能性もささやかれるほどに分断を深めているが、その根幹には宗教、特に世界の終末とキリストの再臨を信じる福音派の存在がある。

 日本人にはつかみにくいその教義と歴史を、生き生きとした文体で描いた本書は、タイムリーであるばかりか、宗教をレンズとする米国精神史・政治史にもなっている点で、稀有の一冊である。
 福音派は、プロテスタント系の保守的・道徳的な原理主義であり、聖書を字義通りに受け取る立場からハルマゲドン(最終戦争)の到来を語ったが、1920年代にはその時代錯誤ゆえに日陰に追いやられた。
 だが、南部出身のビリー・グラハムの伝道を経て、76年のカーター大統領当選を機に、政治の表舞台に躍り出る。その後も福音派はレーガン、クリントン、ブッシュ、オ バマらとも交差し、トランプ時代にはキリスト教ナショナリズムの中核として、イスラエル政策にも影響を与えるまでになった。

 この百年の歴史は、何と起伏に富んでいることか!「古き良き」白人中 心の価値観に根ざす福音派は、反リベラルである一方、民主党・共和党双 方の大統領と関係した。
 また、ラジオからウォルマートまで、教えを広める経路も多様多彩であった。福音派はキリスト教を米国化しつつ、米国のキリスト教化をもくろむが、それは今や理性的な公共空間を脅かしている。

 かくして本書は、キリスト教が今後どこに向かうのかという宗教史的な問題をも考えさせる。われわれは宗教改革以来の重大な分岐点を目撃しているのかもしれない。(中公新書1200円)
       
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2025年12月21日

【寄稿】東京都練馬区で住民追い出し計画 民意無視の専門家委員会に唖然=木下寿国(ライター)

 この人たちに学問の府を構成する人間としての自覚はあるのだろうか――大学教員を集めた専門家委員の議論を傍聴していると、じりじりとしたいら立ちのような気持ちに駆り立てられる。東京都練馬区で開かれている公園造営計画にかかわる専門家委員会。話し合われているのは、やってくる人たちを迎えるビジターセンターをどのようなものにするか、公園の区割りや水辺を楽しめる遊歩道はどう設計するかなど。それ自体は、住民らの生活環境を向上させるためのいかにもほのぼのとした課題のように思われる。ただし、それがいまそこに住んでいる約1000人、500世帯を立ち退かせることが前提になっているのでなければ。

 計画は、いま樹林地になっている公園約2.2ヘクタールを含む周辺の住宅地約10ヘクタールを新たな公園として整備しようとするものだ。対象地域内に住んでいる人たちには立ち退いてもらうことが前提になっている。
区が計画に取り組む最大の根拠としているのは、当時は田んぼや畑ばかりだった対象地域が1957年に公園として都市計画決定されたことだ。ところが今日ではそこに住宅が建ち並び、当時ののどかな面影はすっかり姿を消している。
 それを決定から60年以上も経ってから、かつての計画を根拠に、公園化=住民立ち退きを進めようというのだ。そんな昔の話がなぜここにきて蒸し返されることになったのか。区は緑化の推進などを理由に挙げているが、現住民を追い出してまで実行する根拠としては弱すぎる。一部には、現区長のレガシーづくりではないかとの見方もある。

 区が計画を実行するために持ち出した名目が、多年草植物カタクリの保護だ。かつては大手マスコミにたびたび取り上げられたこともある区が誇る自然資源であるにも関わらず、対象地域でカタクリが減少したのは市街化の進展により生育環境が害されたせいで、守るには全体を公園化して住宅を追い出すしかないというのが区側の言い分だった。区の職員を招いて住民が開催した説明会では、出席者から「カタクリのために追い出されるのか」との声が漏れたほどだ。
 なのに、2年前からこの12月まで9回に渡って開かれた専門家委員会でそれらが議論されたことはほとんどない。

私は計画の無謀さを知ってから、このような委員会の大半に出席して傍聴を続けてきた。これまでのところ、専門家とされる委員たちが住民らの気持ちを慮るような姿勢に接したことはまったくない。計画を進めたい区の意向に添って、公園づくりのアイデアを出しているだけという感じなのだ。それを見ていて、つくづく思う。彼ら委員にとって学問とは何なのかと。学問とはあらゆる所与の前提を疑うところから始まるものではないのか。区から与えられた計画をうのみにして専門家風の意見を提供するだけなら、結果として区の意向にお墨付きを与えているだけではないか。「御用学者」という言葉がまざまざと頭に浮かぶ。こんなことで学者とか学問と呼べるのか。

 計画の実績づくりだけが進んでいく事態に耐えられなくなった対象地域の住民らは、会場で思いのたけをアピールし始めた。12月8日に開かれた専門家委員会では、終了後、これまでもたびたび区に意見を具申してきたYさんが担当課長に「今日の委員会など、カタクリにまったく触れていないではないか」と厳しく詰め寄った。
 住民が最も気にする事業の核心は素通りし、さも民主的な手続きを踏んでいるかのような形式だけが積み上げられてゆく。そんな民意無視の区の対応の一端がそこに示されていた。

 やりきれないのは、こうした公共事業のやり方はこの件に限らず、そこいら中にあふれているのではないかということだ。

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2025年12月19日

【焦点】吉村代表面目丸つぶれ、定数減成立は不透明 切り捨ての維新、党存亡の危機=橋詰雅博

 国会議員定数削減は来年の通常国会で継続審議となった。庶民が求める企業・団体献金禁止の審議を脇に追いやり突然提出した日本維新の会の削減案は、特別国会での成立を維新は主張したが、思惑が完全に外れた。自民党との連立で手柄をたてようとした吉村洋文代表は面目丸つぶれ、低迷する支持率はさらにダウンという可能性もある。
 
 そもそも議員定数を削減する必要があるのだろうか。現在、衆参両院の合計議員定数は713で、ピークの1980年代後半から約50減った。12月5日付日経新聞コラム「十字路」で「議員定数削減で社会は良くなるか」と見出しが付けられた筆者の大和総研常務執行役員の鈴木 準氏によると、人口一人当たりの国会議員数を日本と比べると、ドイツは1・4倍、フランス、イタリア、カナダは2倍前後、英国は3・6倍。米国は日本の4分の1強と非常に少ないが、国立国会図書館の資料では、フルタイム雇用の秘書が議員一人当たり下院で平均15人、上院で30〜50人いて、議員補佐する体制が格段に充実している。
「数十億を浮かせた衆院議員の1割削減を見て留飲を下げる国民は少数だろう」「議会に望まれるのは、国民所得を拡大させて社会の閉塞感を打破する歳出構造をつくる務めを果たすことだ」と述べている。

 河野洋平元自民党総裁も「国会議員は国民の代弁者。その代弁者の削減は一考してもらいたい。欧州と比べて日本は多いとはいえない」とメディアのインタビューに答えている。

 定数削減にやる気がない自民党なので通常国会でも成立するかどうか不透明。補正予算で国民民主党と公明党が賛成に回ったことで、自民党は維新との連立を解消し本命≠フ国民民主党と新たに連立を組ことに動き出しているようだ。
 切り捨ての維新、党存亡の危機に直面か。
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2025年12月18日

【Bookガイド】12月の“推し本”紹介=萩山 拓(ライター)

 ノンフィクション・ジャンルからチョイスした本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆豊田直巳/著・写真『消える風景━明日へのねがい』農山漁村文化協会 12/10刊 2500円
原発事故によって無人の町になった大熊町や双葉町。そこでは原発災害の風景が次々と消え、がれきや除染土は中間貯蔵施設へ。そうした中で土地や家族を奪われた人の思いや願い、取り組みを克明に写真で写しとり、そこへの著者の共感を文章にして克明に伝える。
 著者は1956年、静岡県生まれ。フォトジャーナリスト。長年にわたり、イラクやパレスチナなどの紛争地を取材。劣化ウラン弾問題やチェルノブイリの取材経験をもとに、東日本大震災後は福島を中心に取材活動を継続し、映画製作も行なう。著書に『戦争を止めたい』、『フクシマ元年』など。製作映画『奪われた村』がある。
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◆泉秀一『アフリカから来たランナーたち━箱根駅伝のケニア人留学生』文春新書 12/16刊 1100円 
箱根駅伝のエース区間「花の2区」を、誰よりも速く駆け抜けたケニア人留学生たち。お正月のテレビ放映にクギ付けの私たちだが、彼らの実像は,ほとんど知られていない。実は彼らは生きるために走るしかなかった。彼らの家族、兄弟、故郷、友人、そして来日の方法など、ケニア人留学生の真の姿を追って、アフリカの大地を訪ね歩き、現地取材から得た貴重なレポート。
 著者は1990年生まれ。関西大学社会学部卒業後、ダイヤモンド社に入社。週刊ダイヤモンド記者を経て、フリー・ジャンジャーナリストに。
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◆木瀬貴吉『本づくりで世の中を転がす━反ヘイト出版社の闘い方』集英社新書 12/17刊1000円
近年、小規模で個性的な「ひとり出版社」が注目を集めている。2013年創立の出版社「ころから」は、小さくとも、したたかに、世の大勢に抗う本を出し続けてきた。その独自性の源泉はどこにあるのか。創立のきっかけや本を刊行してからの読者の反響、さらにヘイト本が蔓延する書店とそうした社会の現状をいかに動かし、転がしていくか、知恵を絞った者たちの闘いの記録。
 著者は1967年滋賀県生まれ。2013年に二人の仲間とともに出版社「ころから」を設立し代表となる。これまでに約80冊の本を刊行。
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◆森まゆみ『温泉放浪記』新潮社 12/17刊 2150円
帰りたい宿がある、忘れられない人がいる。心ほどける湯けむり紀行。子どもの頃からの温泉好きで、風情ある温泉場、大事な宿や人との一期一会の思い出は数知れず。北海道から九州まで――東の横綱・鳴子温泉郷、西の横綱・大分の温泉はもちろん、じつは書かずにとっておきたかった宿、千人風呂での大失敗も……。おいしいものや文学・歴史方面にも寄り道する気まま旅。どうぞご一緒に。
 著者は1954年生まれ。1984年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊。聞き書きから、記憶を記録に替えてきた。著書に『鷗外の坂』、『谷根千のイロハ』、『子規の音』など。
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◆渡辺京二『私の幕末維新史』新潮選書 12/17刊 1600円
「色眼鏡」を外すと歴史はこんなに面白い!「幕府は薩長に倒されたのではなく自壊した」「尊王攘夷が盛り上がった理由は日本人の“京都敬い”」「吉田松陰の面白さは馬鹿げていて愚直なところ」「外国人が幕末の人々に感じた頭の良さと狡猾さ」「大久保にない西郷の人間的な魅力」……『逝きし世の面影』の著者が、黒船来航で始まる激動期を独自の視座から捉え直す。
 著者は1930年、京都市生まれ。2022年12月逝去。熊本市在住。日本近代史家。著書に『逝きし世の面影』、『もうひとつのこの世-石牟礼道子の宇宙』など。
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◆和田靜香『中高年シングル女性━ひとりで暮らすわたしたちのこと』岩波新書12/23刊960円
女性がひとりで暮らしていくしんどさ、苦労、精神的孤立感。いま中高年の女性たちは、見えない縛りに苦闘している。あらゆる社会保障や支援の狭間にこぼれ落ちてしまう恐怖。「透明」な存在と化した中高年シングル女性。仕事や住まい、お金の悩みから、老後の不安、人間関係まで━「ひとごとではない」実態を、多くの当事者女性たちの声とリアルな実態通して伝える。
 著者は1965年生まれ。相撲・音楽ライターにして、政治ジャンルでも取材ルポを著す。『選挙活動、ビラ配りからやってみた』が異例のヒット。
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◆酒井信『松本清張の昭和』講談社現代新書 12/26刊 1100円
想像を絶するほどの貧困、高等小学校卒、40歳を過ぎて文壇デビュー、そして国民作家へ。松本清張「初の本格評伝」が登場! 逆境から清張文学の成果を生み出した生涯を描く。文豪が体現した「不屈のバイタリティ」の数々、それを育んだ「昭和という時代の力」が、どのような内容であったか。幼少期の秘話、思春期以降の恋愛、戦争体験などなど……清張の知られざるエピソードが満載。
 著者は1977年、長崎市生まれ。明治大学准教授。専門は文芸批評・メディア文化論。著書に『松本清張はよみがえる』など。
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2025年12月17日

【焦点】公明の連立解消「本当の理由」、「渡りに船」と飛びついた維新の事情=橋詰雅博

 11月24日(月祝)JCJオンライン講演に登場したTBSコメンテーター・星浩氏は、26年間の自公連立から公明党が離脱した「本当の理由」を2つ挙げた。
 
 高市早苗首相は神社本庁と保守グループ日本会議が強力な支持基盤。公明の選挙母体の創価学会は、この2つのグループと長年ライバル関係にある。星氏は「神社本庁が本宗(ほんそう,すべての神社の上に立つ)と仰ぐのが伊勢神宮。戦前、創価学会の前身『創価教育学会』初代会長の牧口常三郎氏は、伊勢神宮に対する不敬罪兼治安維持法で逮捕され獄死している」と述べた。日本会議の方は、宗教団体生長の家が母体で、創価学会とは路線の違いからそりが合わなかった。「学会にとって神社本庁も日本会議もいわば宿敵=v「学会の意向で自民との連立は無理でした」―これが星氏の見方だ。

 もう一つは、公明の「生みの親」である池田大作創価学会名誉会長が2年前に死去したこと。1969年の言論出版事件などで池田は国会での証人喚問を要求されていた。「池田を証人喚問から守るのが公明の最大ミッション」(星氏)。池田の死去でミッションから解放され、自民と連立を組む理由が消えた。

 また星氏は、日本維新の会が自民党と新たに連立を組んだ「事情」も話した。
 維新は地盤の大阪から全国に支持拡大をめざし2024年総選挙で候補者164人を擁立した。しかし、当選者は小選挙区で23人、比例区で15人の合計38人と公示前より6議席減だった。全国展開は完全に失敗。落選者は120人を超え、この人たちを次の国政選挙までどう面倒を見るか頭を悩ませていた。「立憲民主党などは落選者に生活費として一定金額を支給しているが、維新にはその余裕がない。途方に暮れる人が多かった」と星氏はいう。

 そこに自民から連立の話が持ち込まれ維新には「渡りに船」だった。星氏は「次の総選挙では、小選挙区は連立を組む自民候補者を応援するので、『落選者を推せません』と維新は言い訳ができる。面倒を見る必要がなくなった。つまり切り捨てたのです」と語った。
 自民から離れた公明、逆にくっついた維新、次の総選挙でその選択の結果が出る。
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2025年12月16日

【フォトアングル番外編】防衛省前でドローン輸入中止集会を実施=12月5日、東京都新宿区、伊東良平撮影

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 12月5日に防衛省正門前で「防衛省はイスラエルの戦争犯罪企業からドローンを買うな!抗議署名追加提出アクション」行動集会が行われた。
 パレスチナのガザ地区ではイスラエル軍の無差別攻撃で子どもを含む多くの民間人が虐殺されている。その主な武器として攻撃型ドローンが使用されている。
 日本とイスラエルの軍事協力は強化されていて、イスラエルの大手軍事企業IAI(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)から、このドローンを日本は輸入しようとしている。「攻撃型ドローンの輸入を中止せよ、防衛省よ恥を知れ」とパレスチナの旗を振る80人が抗議の声を上げた。
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2025年12月15日

【映画の鏡】地元テレビ局が底力を発揮『原爆資料館〜語り継ぐものたち〜』豊富なアーカイブを集大成=鈴木 賀津彦

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               広島ホームテレビ
 11月28〜30日に開催される今年の広島国際映画祭のクロージング作品として上映される、広島ホームテレビ開局55周年事業・被爆80年記念作品のこのドキュメンタリー映画に注目している。

 開館70年を迎えた広島平和記念資料館。「壊滅した街で始まった“ガレキの展示室”が、どのようにして世界有数の「悲劇の記憶の博物館」となったのか─」。監督は長年取材してきたベテランと若手の2人のテレビマン、立川直樹、斉藤俊幸の両氏。地元局だからこそ持つ55年間の豊富なアーカイブ映像を駆使し、初代館長・長岡省吾氏の思いから始まった資料館の歩みと平和への思いを描いている。

 立川直樹監督はこう語る。「原爆資料館の取材は広島の報道記者にとって必ず通る道で、自分も記者になりたての頃は、各国の要人が視察に来たときや、核実験があったときなど、度々取材に行っていた。広島市政担当になってからは、とある元資料館長の密着取材を通じて、原爆の記憶の継承や平和を求める執念にも似た思いに触れてきた。学芸員さんには、その知識と見識の深さにいつも頼らせていただいていたし、地下の資料室に入り浸ったこともあった」と。

 映画はそんな記憶を受け継いできた様々な人たちにフォーカス。「自分が見てきた方々の熱い想い、先人の方々の取材、そして若手ディレクターが取材した新たな取材とともに、その歴史の一端を表現できた」と力を込めた。
 地域に根差したローカル局が底力を発揮し、新たな作品の形への挑戦だと受け止めた。今後の全国上映にも期待したい。
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年11月25日号 
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2025年12月14日

【おすすめ本】松島京太『汚された水道水 「発がん性物質」PFASと米軍基地を追う』━調査報道が現実を動かす貴重な成果=中島岳志(東京科学大学教授)

 近年の東京新聞の調査報道には目をみはるものがある。中でも注目してきたのが、PFAS問題だ。本書は、その中核を 担ってきた著者による成果を纏めたものである。

 PFASはフッ素と炭素が結合した人工の有機化合物で、様々な健康被害をもたらすとされる。近年、米軍基地でのPFASを含む泡消化剤大量使用による地下水汚染が、明らかになってきた。
 東京新聞立川支局勤務になった著者は、地元の問題としてPFASに出会う。市民団体が血液検査を始めるという情報を得て、2022年11月13日に「横田基地周辺 血液検査へ」という見出しで1面に記事化、ネット上で大きな話題となる。

 血液検査の結果が衝撃的だった。国分寺市を中心とする検査参加者の85%が「健康被害のリスクがある」という結果が出て、これを報道したことにより、多摩地の住人の怒りに火が付いた。
 疑惑の先は米軍横田基地。そこには日米地位協定がはだかるが、その壁を著者は地道な取材で少しずつ崩していく。本書の特筆すべき価値は、地道な調査報道が現実を動かしていくプロセスを明示している点だろう。

 この東京新聞の報道が世論を動かし、これ以上隠せないと考えた自治体や防衛省、米軍が動きはじめる。米軍は、報道を きっかっけに泡消化剤の漏出を認める。日本を守るために駐留しているはずの米軍が、日本人の身体を脅かしている現実があらわになっていく。

 風化を狙う権力に対して、報道し続けることの重要性がよくわかった。ジャーナリストを目指す者にとって必読の書だ。(東京新聞1600円)
                
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2025年12月13日

【月刊マスコミ評・放送】放送局の「ガバナンス」をめぐって=岩崎 貞明

 読売新聞など各紙は10月23日、民間放送事業者のガバナンス(企業統治)のあり方を検討する総務省の有識者会議が「国の監督機能を強化する骨子案を示した」と報道した。不祥事で経営が悪化した事業者に対し、国が事案の報告を求める制度を新たに設ける、という。報道によると「業界の自主的な取り組みを尊重しつつ、行政として一定の関与ができる枠組みが必要と判断した」。

フジテレビではタレントによるアナウンサーへの性暴力事件の発覚を契機にCMの中止・出稿見送りが相次ぎ、経営が悪化して、いまだに回復しきれていない。有識者会議では「財務基盤の弱い地方局で同様の事案が起きれば、放送事業の継続が難しくなる恐れ」があることから、国の監督機能を強化するよう求める意見が出たようだ。

 石破茂内閣当時の総務大臣は村上誠一郎氏で、自民党内ではリベラル派として知られた。フジテレビをめぐる一連の問題が発生した際にも、村上総務相は放送法の趣旨に則って「放送局の自律」を重視し、比較的慎重な対応を心がけていたように思われた。

  村上総務相当時に発足したこの有識者会議ではあるが、これが高市早苗首相による自民・維新「連立」政権の下ではどうなるのか、目が離せない。何と言っても、総務相だった2016年、政治的公平性に問題ありと政府が認定した放送局を放送法違反として処分する「停波発言」で物議を醸した張本人が内閣総理大臣になったわけだ。「国の監督機能を強化」する方向性はやむを得ないのかもしれないが、放送内容への介入になればやはり「表現の自由」との軋轢が生じよう。

 そもそも放送局の「ガバナンス」を強化するということは、局の経営が放送内容への関与を強めることになり、それは番組編集の自由への制約につながる。そこへさらに行政の関与がかぶさってくれば、制作現場への締め付けが一層厳しくなるのは必至だ。自由にモノが作れないからテレビを離れてネット配信に行きます、というクリエイターが一段と増加することになるかもしれない。

 究極のところ、表現の自由との衝突が起きるのは放送の直接免許制がネックなのではないか。しかし有識者会議の議論を見る限り、先進諸国にならった独立行政機関による間接免許制の是非が論じられた形跡は見当たらない。まあ、高市政権下では無理な注文か。
         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年11月25日号 
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